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アーティストボイス

イリア・グリンゴルツ
©J Henry Fair/DG

イリア・グリンゴルツ インタビュー

 Ilya Gringolts
 聞き手=トッパンホール
自身とヴァイオリン、今回のプログラムや今後についての思いなど、興味深い話がいっぱいです。
―― ヴァイオリンを始めたきっかけは?

家族の中に音楽をやっていた人間がいたわけではありませんが、父がとてもヴァイオリンを好きだったんです。もちろん、今でも父にとっては大好きな楽器のようで、とにかく僕にヴァイオリンを習わせたかったんでしょうね。両親がヴァイオリンの先生を探していた時、友人たちに薦められて出会ったのがタチアナ・リヴェロヴァさんでした。僕は5歳からヴァイオリンを始めたんですが、6歳から11年間、リヴェロヴァさんのもとで勉強しました。

―― サンクトペテルブルク時代にはタチアナ・リヴェロヴァさんに。ニューヨークではイツァーク・パールマンさんに師事したそうですが、それぞれの先生からどんなことを教わりましたか。

何よりも学んだことは、物の見方というよりヴァイオリンに対する心構えでした。リヴェロヴァさんからはヴァイオリンの技術的な基礎を学びました。11年間、彼女の自宅やレッスン室に通い、何時間も過ごしてきたわけですから、彼女との思い出は語り尽くせないほどありますよ。
パールマンさんからはステージで演奏する上で必要なヒントをいくつももらいました。17歳の時、ジュリアードで彼のレッスンを受けないかと誘われ、ぜひそうしたいと思って入学したんです。1回のレッスンは1時間そこそこでしたから、その限られた時間の中で大切なことが数多く凝縮されていたと思います。

―― そういえば、8歳の時にパールマンさんの演奏を聞いたのが強く印象に残っているそうですね?

当時サンクトペテルブルクのフィルハーモニーホールで、チャイコフスキーの生誕150年を祝うガラコンサートが行われたんです。コンサートにはヨー・ヨー・マやジェシー・ノーマン、パールマンを始め、たくさんのアーティストが出演していて、とても盛大でした。本当に素晴らしいコンサートだったんですよ。僕の幼年時代の中で一番の思い出深いコンサートでした。

―― プロのヴァイオリニストになろうと思ったのは何歳頃か覚えていますか?

9歳の時にロシアの全国コンクール(All-Russia Junior Competition)で2位に入賞したときです。

―― 16歳の時に国際パガニーニコンクールに優勝した後、あなたのまわりは一変したのでは?

ヴァイオリンへの姿勢といった意味では全く変わりませんでした。ただ、優勝した翌年、僕はジュリアード音楽院に入学するためにニューヨークに移ったんですが、ロシアとアメリカでは国自体が違うわけですからね…、そこに住む人、社会、文化、あらゆるものが違っていました。ニューヨークに来たすぐの頃は、そういった違いの中に溶け込み、慣れていこうとよく思いましたよ。

―― 日本の印象について話していただけますか。今回で何回目の来日なんでしょう?

今回が3回目の来日になります。日本は食べ物がおいしいですよね、お寿司とか…。僕はイタリア料理と日本料理が大好きなんです。これまではあまり充分な時間がなくて、東京見物が少しできたくらいでしょうか。次回はもっといろいろ見てみたいと思っています。そうだ、いつか京都に行ってみたいですね。

―― 今回のリサイタルについて話してもらえますか。トッパンホールにとっては、3周年記念のリサイタルになります。

今回のプログラムは、できるだけいろいろな作品を集めたいと思いました。バッハ、バルトーク、シベリウス、サラサーテと、時代の異なる作曲家の作品を集めました。メインはバルトークの無伴奏ヴァイオリンで、この曲は、恐らくバルトークの作品の中でも最も彼らしい作品のひとつだと思います。

―― この4月に来日した時のインタビューでは古楽奏法を研究されているとお話になっていますが、バロック的なアプローチについてお話いただけますか。今回のプログラムの1曲目に演奏されるバッハの無伴奏も楽しみです。

モダン弓を使っていますが、弓の速度を頻繁につけヴィブラートを控えめにした演奏が好きなんです。僕としては、ヴィブラートはいろいろある表現方法のひとつにしか過ぎないと考えていますから。

―― 今回共演するクリストファー・グーズマンさんも、ジュリアード音楽院の頃からの友人だと思いますが、ジュリアード時代の友達と演奏することは今でもありますか。

3年前になりますが、ジュリアードにいた頃カルテットを結成していて、今も演奏することがあります。クリストファーとは毎年アメリカで一緒に演奏していて、日本で共演するのは2回目になります。

―― 今回は東京で唯一のリサイタルになりますよね。何かメッセージをいただけますか?

これからもっと日本で演奏していきたいですし、その機会が増えればいいなと思っています。

(2003年8月11日)