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アーティストボイス

水野信行

水野信行 インタビュー

 Nobuyuki Mizuno
 聞き手=トッパンホール
 撮影=藤本史昭
中世のたたずまいを色濃く残す、南ドイツの古都バンベルク。ドイツで最も美しい町のひとつと言われるこの町の顔は、オーケストラ(バンベルク交響楽団)。わずか人口7万の町に存在するビッグ・オケの秘密を解き明かすと、そこに今回の木管五重奏の魅力が見えてきます。23年にわたって首席ホルン奏者を務めた水野信行さんに、今回の演奏会の水先案内人になっていただきました。
―― はじめに、トッパンホールの印象から伺えますか。

 ヨーロッパのホールのように、自然な響きと残響を持ったホールですね。とってもあたたかみのある音がする。それと室内楽をやるには、非常にいい大きさだと思います。ヨーロッパのお城や、お城を改造した室内楽ホールから受ける印象に似ています。バンベルクやその周辺にもたくさんあってね。われわれはそういう場所で、オケの室内楽のシリーズを定期的にやったりしています。

―― 23年にもわたってバンベルク交響楽団に在籍された、その魅力はどんなところにあるのですか?

 あそこまで居心地のいいオーケストラはどこ探してもないんじゃないかな、っていうくらい、とってもいい雰囲気のオーケストラで、音楽的にも生活環境にもすべて満足していました。バンベルクの町はユネスコの世界遺産にも指定されていますが、戦争の被害を奇跡的に受けずに、中世がそのまま残ってる。大変キレイで魅力的なところです。

―― 町の雰囲気、町の印象がそのままオケのトーンになっているという感じを受けます。

 それはあるかも知れませんね。ドイツの、ほかのトップクラスのオーケストラが大都市を本拠にしているなかで、人口7万人の町に120人規模のオーケストラがあるというのは、すごく例外的。それに、ミュンヘンやベルリンだったらオーケストラもいくつもあるしソリストも住んでるから、室内楽をやるにしても同じオケのメンバーだけでやるとは限らないんですけどね。バンベルクは環境が限られてるから、室内楽もオケのメンバーとしか出来ない。そのうえツアーが多いオケなので、仲間と一緒にいる時間が本当に長いんです。そんな親密さが音に現れているっていうことはあるのかな。

―― 町の主役、町の話題の中心にオケがあるんですよね。

 新聞のトップ記事にオーケストラのことが必ず出てくるようなところです。ほかに何もニュースがないということもあってね(笑)。お店で特別に割引がきいたり、駐車違反の見回りのおじさんに切符を切られても、オケのメンバーだって言うと切符を破いてくれちゃったりね。東京じゃ考えられないくらい大切にされてます(笑)。

―― 芸能人並みですね(笑)。

 小さな町なので、われわれは“町の有名人”なんです(笑)。ホールのホワイエとか町なかとかいろんなところで室内楽を演奏したりしてね、聴く人とも溶け込んでいる。僕もこのオケに入ったときから、オケのメンバーと様々な室内楽をやってきました。エッシェンバッハが指揮しに来たときに彼がピアノを弾いたモーツァルトなんて、最高だったな。

―― 今回のプログラムにも入っているクィンテットですね。名曲ですよね。

 管楽器を中心とした曲のなかでは、最高レベルの曲だと思いますね。音楽的に深みのある素晴らしい曲です。この曲がなきゃ始まらない、みたいな…。プーランクもこのメンバーで出来るもう一つの傑作です。それからラヴェルの「クープランの墓」。今回は、クラリネット奏者の山根さんという方が編曲してくれた作品を演奏します。木管五重奏版もあるんですけどね、もともとはピアノかオーケストラの曲なんで、出来たらやっぱりピアノつきでやりたいと思って。細川さんの作品は、今から14年前にTHE WOODS[工藤重典(fl)・宮本文昭(ob)・四戸世紀(cl)・馬込 勇(fg)・水野信行(hr)]が委嘱した曲で、1989年11月にカイロで初演した曲です。あとは、アーノルドというイギリスの近代作曲家の作品。

水野信行
ウルスラ・ヘッグブロム
バーバラ・ボーデ
アレクセイ・トゥカチュク
ヨハネス・パイツ
松岡美絵

―― 今回のメンバーについて簡単にご紹介ください。


 オケ仲間なわけですが、音楽的にも気の合ったいいメンバーです。パイツは元首席でね、ともかく素晴らしい。演奏だけでなく、人間的にも。教えるのも抜群に上手いしね。オーボエの首席のバーバラ・ボーデは、入団オーディションのときにみんながびっくりしたくらい、上手いです。ほかの人が入ることがほとんど決まってたのに、入ってもらった人でね。ほかのメンバーもみんな、魅力的な音楽家です。それぞれすごく個性が強くて。でもアンサンブルっていうのはやっぱり、もちろんまとめることも必要なんだけども、個性のある人たちが集まって、その個性を出しつつハーモニーさせるっていうのも、絶対に必要だと思うし、そのほうが面白いと思うんですよね。

―― 確かに。ヨーロッパで聴いたりすると、こういう演奏会って肩ひじ張ったものじゃなくて、気の合った仲間が愉しむ延長にある感じがしますね。音楽が好きでたまらないという空気があふれているというか…。ぜひ、そういう雰囲気をトッパンホールに持ち込んでください。

 そう、大袈裟な演奏会じゃないのね。親しい仲間がパッと集まってそれじゃやろうよ、みたいな楽しい感じがある。ステージでそれを出せるよう、頑張りましょう(笑)。

バンベルク木管五重奏団
2004年3月4日(木)19:00
バンベルク木管五重奏団
[ウルスラ・ヘッグブロム(フルート) / バーバラ・ボーデ(オーボエ) /
 ヨハネス・パイツ(クラリネット) / 水野信行(ホルン) / アレクセイ・トゥカチュク(ファゴット)]
松岡美絵(ピアノ)
モーツァルト:ピアノと管楽器のための五重奏曲 K452
ラヴェル:組曲「クープランの墓」(ピアノと管楽器のための)
M.アーノルド:木管五重奏のための三つのシャンティ(水夫の歌)
細川俊夫:フラグメント(断章)第3番 (1989)
プーランク:ピアノと管楽器のための六重奏曲(1932〜39)
■一般 5,000円 / 学生 1,800円