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アーティストボイス

今の自分に足りないもの、それを補うものに挑戦したい
岡田 将 インタビュー

岡田 将 インタビュー

 Masaru Okada
 撮影=藤本史昭
〈エスポワール〉第4弾アーティストは、ベルリンで研鑽を積み、国内での本格的な活動が待望されている、ピアノの岡田将。12月のスタートへ向けて、ホールやシリーズへの抱負を聞きました。
 ピアノは3歳から始めました。野山を駆けるのが好きな元気いっぱいの子供でしたので、小さい頃は練習嫌いでしたが、小学校高学年の時、ラジオから聞こえてきたショパンのワルツがきっかけで、ピアノへの気持ちが変わりました。弾いていたのはルービンシュタインで、今でもその時の感動はよく覚えています。高校は桐朋へ進み、卒業と同時にザルツブルクへ留学しました。一年後にはベルリンへ移って勉強を続け、今もベルリンに住んでいます。もう十年以上になります。

 ヨーロッパに行って驚いたのは、オケの音が国や街で全然違うことです。いろいろな要素が絡み合ってでしょうが、結局環境が音をつくる、ということなのでしょう。僕自身、自分の音楽生命に大きく関わりますので、身を置く環境を大切に考えています。音楽は、点の集合ではなく響きのなかにあってそれを動きとして表現していきますが、環境によってこの動きが変わってくるんですね。日本に帰国したり、向こうに戻ったりする度、自分のつくる音楽が確かに変化するのを実感します。

 トッパンホールで弾いたのは、園田高弘先生のシリーズに出演させていただいたのが最初です*。リハーサルで弾いた時に、家で弾く感覚そのままで弾けてすごく驚きました。気持ちがよくて、ずっと弾いていたいほどでした。客席と舞台上とで聞こえてくる音にあまり差異がなく、どんな小さな音でも鳴らした音がそのまま戻ってくるので、コントロールがしやすくて面白い。いろいろな可能性が見えるホール、という印象を持っています。(*園田高弘が推薦する“旬のピアニスト”シリーズVol.3に出演)
 このコンサートがきっかけでトッパンホールから声がかかり、ランチタイムコンサートではムソルグスキーの“展覧会の絵”を弾きました。僕の長所が生きる曲、ということでリクエストされましたが、自分でも弾きたいと思っていたのでいいタイミングでした。
 その2つのステップを経て、今回のシリーズが決まりました。音楽家は舞台を踏むこと、聴き手がいる場で演奏してこそ成長すると思うし、なかなかない機会をいただいたので、積極的に今の自分に足りないものに挑戦して、新しい可能性を拓いていきたいと考えています。
 アイディアはいろいろ浮かびましたが、第1回では、全曲リストを弾くことにしました。プログラムの中心になるロ短調のソナタは、ずっと弾いてきたし、これからも長く弾くつもりの曲です。出逢いは、ブレンデルの演奏会。非常に感銘を受けて、翌日には楽譜を買って弾き始めました。このソナタには、バロックも古典派もロマン派も入っていて、未来へ目を向ければ、印象派や現代音楽の方向性も見えてくる。一番芯には、リストには欠かせない宗教的な要素も入っています。それらがとても上手く融合した作品で毎回新鮮に付き合えるし、その内奥を徐々に解明していく面白さを感じます。そしてそのソナタに、今回はリストの後期作品を組み合わせました。これまでは、ロ短調ソナタまでの作品しか年頭になかったので、後期作品に触れることで、新たな発見に繋げられればと期待しています。またシリーズの合間になりますが、来年の夏にはバイロイト音楽祭の一環で、ワーグナーの家にあるリストが弾いたというピアノで、リストをプログラムしたリサイタルを予定しています。
 2005年6月の第2回では、まだ本格的に取り組んだことのない室内楽を、スタートから一年後の第3回では、自分が生涯にわたってつき合っていくだろうドイツの古典を中心にプログラムを考えています。

 ちょうど一年にわたるシリーズが、今からとても楽しみです。僕自身が楽しみにしているので、お客さまにも楽しみにしていただきたいし、みなさんも僕も楽しめるよう、しっかり準備したいと思っています。

〈エスポワール〉
岡田 将
Vol.1 ―リストへの憧憬

2004年12月8日(水) 19:00
岡田 将(ピアノ)
<オール・リスト・プログラム>
小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ(「2つの伝説」S175より)
バラード第2番 ロ短調 S171
コンソレーション S172
スペイン狂詩曲 S254
灰色の雲 S199
ピアノ・ソナタ ロ短調 S178
■一般 3,000円 / 学生 1,500円
Vol.2 ―室内楽
2005年6月22日(水)19:00
Vol.3 ―ソロ
2005年12月8日(木)19:00