トップページ > アーカイヴ > インタビュー > Vol50. 篠崎和子×瀬崎明日香 インタビュー

アーティストボイス

フランス留学のきっかけになった大好きな曲で、最終回は華やかに盛り上げます!

写真
篠葺a子(ハープ)
Kazuko Shinozaki
瀬楓セ日香(ヴァイオリン)
Asuka Sezaki
聞き手=トッパンホール
撮影=藤本史昭
第1回のソロ、第2回のマチュー・デュフォーとのデュオで、新世代ハーピストとしての圧倒的な存在感を印象づけた篠葺a子。ハープのオリジナル作品にこだわった〈エスポワール〉最終回を前に、共演の瀬楓セ日香を迎え、ふたりに意気込みを語っていただきました。
篠普F 初めてお会いしたのは、文化庁(※)の面接の日でしたよね。

瀬普F 2001年でしたっけ。10年前くらい。

篠普F 2人とも無事研修派遣が決まって、同じ時期、同じパリに2年間留学しました。

瀬普F パリでは家に遊びにきてくださって、お茶を飲んだりおしゃべりしたり。

篠普F 手料理が美味しくて…! とにかく初めてお会いした時から“何てステキな人なんだろう”と思っていた方です。ほとんど年齢が変わらないのに、落ち着いてしっかりしていらして、お姉さんみたい。

瀬普F まぁ。私は篠浮ウんこそ、しっかりされていると思いますけど(笑)。とてもひたむきで、まっしぐらに物事に向かっていく人という印象があります。それはたぶん、ハープが特殊な楽器で演奏技術に多くの苦労を伴うこと、作品を開拓する使命を負っていることと無関係ではないんですよね。挑戦の気持ちや強い探究心が要求されるなか、淡々とマイペースに、苦労を見せずに楽しげに、しっかりと歩いていかれる…そんな強さを持った方だと思います。でもフランスでは郊外への往復も多かったし、大変だったでしょう。

篠普F そうですね。ハープの先生が学校で教えていなかったので、フランスの滞在許可証を取得するために語学学校で研修登録しましたから、普段は語学学習とハープの練習に明け暮れて、月に何回かは片道3時間半かけてリヨンまでレッスンに通う生活でした。たくさん勉強して、すごく密度の濃い毎日だったと思います。

瀬普F 私はもう少しのんびりしてたかな…。ヨーロッパで色々なモノを見ることも留学の大切な目的だったので、ほかの国へ遠出したり、コンサートだけじゃなくバレエやオペラ、芸術全般に触れて過ごしていました。向こうは美術館が無料になる日もたくさんあるし。パリは散歩しているだけで胸の高鳴る街で、人生を、青春を満喫した感じだったかな(笑)。


篠葺a子 瀬普F 留学中、“やはりハープはフランスで生まれた楽器”だと具体的に感じることはありましたか?

篠普F そうですね。やはりフランス作品が多いですし、作曲家と直接交流のあった先生に習うことができたのも得難い魅力でした。曲の成り立ちや背景を手渡されるというか、作曲家の声を近しく伝えられている感覚がありましたね。

瀬普F フランスって、どこか淡いというか、捉えどころのないイメージがあると思うんですけれども、それはたぶん、フランスの人たちが断定的な表現をせず“何かが移り変わっていくさま”みたいなものを重視しているからだと、暮らしてみて実感しました。言葉の響きや身近にあるいろいろなもの…たとえば料理の味の複雑さや、服に中間色が多いというところにも、それが表れている気がします。映画も“これで終わり?”というような、観る側に続きを考えさせる余白のようなものを投げかけて終わるんですよね。そして実際フランス人と話してみると、そういう一見曖昧に思える表現の裏に確固とした意思があること、でも表面的には主張し過ぎないスマートさが求められるんだ、ということが分かります。知性と感性の絶妙なバランスですよね。それが音楽のなかにも色彩として感じられるんだと思います。

篠普F よく分かります。レッスンでも、フランスでは“何故そう弾くのか”という説明がとことんされたうえで、フレーズごとに…語学でいう発音矯正のように細かく指導されます。すべてのフレーズ、すべての表現に細かな深い裏づけがある。それを洗練されたトーンで仕上げていく…フランスならではの音楽のつくり方かもしれませんね。


瀬楓セ日香 瀬普F 私もエスポワールアーティスト(5代目)でしたが、どの回も重要で、音楽家としての歩みのなかでかけがえのない機会でした。“音楽とは何か”という命題と向き合った留学時代を終えたところで、成果を形にする舞台をいただき、将来を見つめる大切なきっかけになったと思います。

篠普F 私も、個人としてもハーピストとしても非常に貴重な機会だと思って取り組んでいます。1回目はソロ、2回目はデュオで、今回がいちばん大きな編成。フランス留学の大きな理由でもあったドビュッシー、ラヴェルの作品を含め、取り上げる曲はどれも、留学中にもたくさんレッスンを受け、いろいろなハーピストの演奏を聴きました。いつかまとめて演奏したいと思っていたものばかりで、カプレは演奏会では初めて弾きます。

瀬普F トッパンホールはヴァイオリンの響きが格別ですけれど、ハープにも素晴らしく合うでしょうね。お客さまもあたたかくて、親密な一体感が感じられる本当に幸福な空間。プログラムがどんな風に響くか楽しみですね。

篠普F 大好きな作品だけで構成したこともあって、ワクワクしています。最初の2曲はトリオで3人が主役の作品ですが、その後はハープを中心にした室内楽で、後半へ向けだんだん編成が大きくなり、華やかに、最後にむかって盛り上げていくかたちになっています。

瀬普F 同世代で、同じ時期に同じパリで学んでいた篠浮ウんとの初共演。しかも私にとっても思い入れ深いエスポワールの最終回でご一緒できることに、特別なご縁を感じます。プログラムも、関連性がある作品を揃えただけかと思いきや、それぞれの違いが楽しめる作品を並べてあるという、凝った内容ですしね。音楽家として、フランスを第二の故郷に選んだ仲間として、フランスで得た財産を生かし、日本では演奏される機会が少ない作品の素晴らしさを、ご一緒に伝えたいと思います。

篠普F シリーズを締めくくるこだわりのプログラムを、瀬浮ウんはじめ素晴らしいアーティストの方と演奏できること、とても光栄に思っています。このメンバーだからこその、素晴らしい演奏会になると確信していますし、私自身、どんな風に音楽が創りあげられていくのか、今から待ち遠しいです。

※文化庁芸術家在外研修制度(現・文化庁新進芸術家海外研修制度)
〈エスポワール シリーズ 7〉
篠葺a子(ハープ) Vol.3─室内楽
2011年10月22日(土) 15:00
篠葺a子(ハープ) / 小森谷 巧(ヴァイオリン) / 瀬楓セ日香(ヴァイオリン) /
赤坂智子(ヴィオラ) / 植木昭雄(チェロ) / 神田寛明(フルート) / 松本健司(クラリネット)
ドビュッシー:フルート、ヴィオラとハープのためのソナタ
武満 徹:そして、それが風であることを知った
ドビュッシー:神聖な舞曲と世俗的な舞曲
カプレ:幻想的な物語 〜エドガー・アラン・ポーの短編小説「赤い死の仮面」による〜
ラヴェル:序奏とアレグロ
■一般 5,000円 / 学生 2,500円