トップページ > アーカイヴ > インタビュー > Vol63. 島田彩乃&原 麻理子&瀧村依里 インタビュー

アーティストボイス

個性と感性がほとばしる熱きステージ

トッパンホールプレスVol.80より
島田彩乃&原 麻理子&瀧村依里

島田彩乃

(ピアノ)
Ayano Shimada

原 麻理子

(ヴィオラ)
Mariko Hara

瀧村依里

(ヴァイオリン)
Eri Takimura
進行=西巻正史(トッパンホール企画制作部長)
写真=小澤智美
公演情報 >>>
2014年8月。ランチタイムコンサート・島田彩乃公演で演奏された一本勝負のブラームス《ピアノ五重奏曲》は、若さとしなやかさを漲らせながら、作品の本質に強く迫る濃密な音像で猛暑の朦朧とした気配を圧倒し、大きく話題をさらいました。共演は山根一仁、瀧村依里、原麻理子、上野通明。トッパンホールがその実力に大きな信頼と期待を寄せる若手5人が再結集しての待望の再演が、2016年のニューイヤーコンサートで早くも実現します。
── 今日は華やかですね。

原 : 3人でチャーリーズ・エンジェル?(笑)

瀧村 : ふふ、がんばりまーす。

── よろしくお願いします(笑)。早速、今度の公演の話をはじめましょう。今回は、この間のランチタイムコンサートが大好評だったのを受けての企画。もう一度聴きたいという声を多くいただき、同じメンバーで同じブラームスの五重奏を再演するのがメインです。

瀧村 : そう、同じ曲演るんですよね。イマイチわかってなかった…。

── 天然て言われるでしょ(笑)。

島田 : 再演ってあまりないですもんね。お客さま来てくださるんでしょうか…?

── 夜じゃないと来られない方もあるし。とにかく好評で、あの後トッパンホール・トライアングル(*1)でも放送したし、e-onkyo(*2)での配信も反響いいんですよ。

島田彩乃島田 : 絶妙なバランスの顔ぶれ、組み合わせでしたね。

原 : 自分では考えつかないメンバーでしたけど、上手い具合にマッチして。

瀧村 : 山根くん、上野くんの若い感性と合うかなと思ってましたが、全然違和感ありませんでした。

島田 : ふたりとも順応性が高くてね。依里ちゃん、結構言ってたね(笑)。

── 天然キャラなのに、若者をイジってた(笑)。

島田 : そうそう、意外とバシッと言うなと思って。

瀧村 : それが楽しくて(笑)。いろいろ言いやすかったし、言ってもらいやすくもありました。ふたりとも、自分はこうだ!という強さはありながら聞く耳もちゃんとあって。

原 : 合わせていて、みんなでトライしよう、という空気が強かった。30分だけの曲のために、贅沢にもホールで丸3日もリハーサルして。

── とことん準備したから、ハイレゾ配信にも耐えうるライヴ一発録りができたんでしょう。

原 : それでまた、再演の機会をいただけた。成長しなきゃいけないですね。厳しいハードルですけど、楽しみです。

瀧村 : ブラームスの前はヤナーチェクですね。すごくいいアイディア!

── 1曲目が、北村朋幹くんが入った男子3人のショスタコーヴィチで、これはこれでこだわりの選曲ですが、そことブラームスをどう繋ぐか考えたときに、このヤナーチェクなら、みんなのキャラクター、それぞれの感性が上手く活かせそうだと思いました。ちょっと濃いものが欲しかった、ということもありますけど。

瀧村 : めっちゃ、濃いですよね。

── 短いけど内容があるでしょう。各々の個性がぶつかり合わなくちゃ面白くないし、ひとつの曲になっていかないところもある。それぞれの音がちゃんと出てくることで、それに反応し合って変わっていく作品だから。

原 : 同じようなモチーフを順番に弾いていきますけど、このメンバーなら前の人の会話を受けるように、その場でインプロビゼーションのようにつくっていくのが楽しめるかも。

── この曲は、内声がバランス型じゃないほうが面白いと思うんですよね。

瀧村 : 遠慮しません(笑)。

原 : ふふ。

── そういうところが合うんじゃないかと、この間の演奏を聴いていて思ってね。ひとつクァルテットを入れて、聴いてみたいと。

瀧村依里瀧村 : 5人の力関係は、どう見えました?

原 : 島田さんの回だったし、まず、島田さんは女王様でしょう。

島田 : でも、女王様は控えめだったでしょ。

瀧村 : そう、意外と控えめ。座長、控えめ。

── 島田さんは“よきに計らえ”みたいなところはあるよね。弦とピアノの違いはどうしたってあるし、ピアニストとしてスタンスはどうでしたか?

島田 : 確かに、クィンテットだといつもは“弦のチームに私ひとり”という感覚があって、すごく寂しい思いをすることが多いです。でもこの5人でやったときは、それは一切ありませんでした。男女比や年齢の感じもよかったのかも知れませんけど、本当に幸せだった。

── 弦は弦の世界観と言葉があるからね。

島田 : そうなんです。でもそれがまったくなく、何の壁も感じずにコミュニケーションできました。すごく嬉しかった。

── その後、山根くん、上野くんとそれぞれデュオもやっていますが、彼らの印象は変わりました?

島田 : デュオだと、もっと自分のやりたいことを伝えてきますね、ふたりとも。室内楽のときは空気を読むところがあって、まだおとなしかったのかな。

── 今回は2回目で、遠慮なく来るかも知れませんね。

島田 : それはそれで面白いですよね。全然違うアプローチもあっていいし。今度は逆に依里ちゃんがイジられるかも知れないし!

瀧村 : いやいや、そう簡単にはさせません(笑)。

原 : 手強い(笑)。

瀧村 : でもふたりとも、本当に素晴らしい。あれだけ才能があって基礎もちゃんとあって、そして素直。素直さって、音楽家にとってとても大事だと思います。自分を強く持つのも大切だけれど、素直じゃないと孤立しちゃう。彼らは才能と素直さを両立させています。だから一緒にやっていて楽しいし、勉強になることがたくさんあって、とても刺激を受けました。

原 : 演奏で、19歳(当時)の彼らにモノを言われて楽しかったな。

瀧村 : 出だしとかすごい渋みがあって、ホントに10代なの?って。ふたりとも本当にいい音楽を知っているんでしょうね。

島田 : よいものを聴き分ける力というか。

── 嗅ぎ分ける力かな。

島田 : 感覚的なものですよね。

原 : 教えられたものじゃなくて。一緒に弾いて楽しい理由はそこにもある。

瀧村 : 上野くんはパッと見はおとなしいですけど、ベースラインは素晴らしく雄弁です。

島田 : そう! 本番、とても支えられました。グイグイ引っ張ってくれるというか。

原 : これからまた、海外にも出て彼らはいろいろ吸収していくんでしょうね。先が楽しみ。

瀧村 : いろいろ教わりたい!

原 : 本当、年齢差は感じなかった。いい意味で。

── 四戸さん(*3)も、原さんや島田さんにそう言ってましたよね。

島田 : 関係ないんですね、音楽って。音楽自体が、世代を超えたものですものね。

── 2回目でさらに踏み込んでやってみたいこと、達成させたいことはありますか?

島田 : 私は左手をもっと意識して弾いてみます。

原 : ベースっていうこと?

島田 : そう。私はフランス生活が長かったから耳が高音部にいきがちで、低音を上手く使うということが、去年はまだ足りていなかったと思う。あのときがきっかけで、以来結構ストイックに「左手、左手」と思って弾いてきたので、たぶん少しは変化があるのじゃないかと…。

原 : すごく楽しみ。やっぱりベースって大事。

── 和音の一番下だから、上にいろいろ…色彩感だとかね、乗ってくるほど大事ですよね。特にブラームスのような曲は。

原 麻理子原 : 前回、すでに弦の音はしっかり混ざっていたし、それがさらにプラスされれば、もっと先が目指せる。深める楽しみが増しますね。

瀧村 : 今回はヤナーチェクもあって、ピアノ五重奏はシューマンも同時期にあるから(1/9キラリ☆ふじみ公演)もっと混じるし、もっと進める。それに、別な曲をやることで、それがまたブラームスに還元されてくる。このあいだも思い切りやったつもりだけど、もっとできると思います。

原 : シューマンをやりながらブラームスも弾くなんて、パレットが拡がりそう。

── 前回の到達点が出発点なわけだから、相当できそうですよね。最後に少し、ホールの印象を聞かせてください。みんなランチタイムをはじめ、いろいろな形で出演してもらってきました。

原 : 本当に素晴らしい、大好きなホールです。ヨーロッパでもトッパンに出たアーティストと日本のホールの話になると、必ずトッパンの名前が出ます。みんな大好きみたい。弾いていて、ホールがさらなるインスピレーションを与えてくれる、数少ない場所です。

瀧村 : 継続して成長の場が与えられることも大きいです。ランチタイムだけで終わらせず、次の機会がまた提供されてよい仲間との出会いも得られる。室内楽には、規模感も抜群にいい。

原 : 無理なく伝えられますよね。もう少し大きくなると頑張らなきゃならない。

島田 : バックヤードから舞台まで一体感があるので、印象が変わらずに舞台へ出られる点もとてもいいです。準備した気持ちのまま自然にステージに立てる。あとは、舞台上で自分の世界にすごく集中できるのに、一方でお客さまとのコミュニケーション、一体感が高いあの距離感もすごい。

原 : お客さまの集中力にも驚きますね。主催公演は、ウィーンのコンツェルトハウスやカーネギー、ウィグモアを見ているような世界基準があって、ときにはその先を走ってる感じも受けます。

瀧村 : チラシにも力が入っているし、全体が高い水準で演出されている印象がある。

島田 : そんな場所で今回また一緒に弾けるの、本当に楽しみ。

原 : 出会いですよね。初めて会った10年前は、彩乃さんはただただ憧れの素敵なお姉さんでしたけど(笑)。依里ちゃんとはまさに、ここで出会ったし。

瀧村 : 共通の知人が多かったり、別なクァルテットで同じ本番というのはありましたけどね。彩乃さんには「いつか一緒に弾きたいね」って言っていただいていたし、おふたりと、やっと一緒に弾けた!って思いました。

島田 : いいよね、この3人。合わせの帰りは、最後ずっと一緒なの。

原 : ずっとお喋りしてる(笑)。

島田 : この密な感じを練って、さらにステージで発揮できるといいなと思います。

*1   トッパンホール、東京芸術大学音楽環境創造科、衛星デジタルラジオ・ミュージックバードによる産学協同プロジェクト。同名の番組が2007年にスタートし、トッパンホールの主催公演からセレクトして芸大の学生が収録したライヴ音源を、ミュージックバードの高音質で放送している。毎月最終日曜22時〜OA中。

*2   オンキヨー株式会社運営の高品質音楽配信サービス。ハイレゾ配信のパイオニアで、創設当初から「トッパンホール・トライアングル」の放送タイトルが一部ピックアップ、配信されている。

*3   モーツァルトをテーマにした昨年のキラリ☆ふじみ ニューイヤーコンサートで、島田、原は《ケーゲルシュタット・トリオ》を四戸と共演した。
トッパンホール ニューイヤーコンサート 2016
トッパンホール アンサンブル Vol.9完売
2016年1月8日(金) 19:00
山根一仁(ヴァイオリン) / 瀧村依里(ヴァイオリン) / 原 麻理子(ヴィオラ) /
上野通明(チェロ) / 島田彩乃(ピアノ) / 北村朋幹(ピアノ)
ショスタコーヴィチ:ピアノ三重奏曲第2番 ホ短調 Op.67
ヤナーチェク:弦楽四重奏曲第1番 《クロイツェル・ソナタ》
ブラームス:ピアノ五重奏曲 ヘ短調 Op.34
■一般 5,500円 / 学生 2,500円