「クラリネット的」な作曲家、ヴィトマン
沼野雄司  
今や世界中でひっぱりだこのクラリネット奏者/作曲家であるイェルク・ヴィトマン。最初に曲に接した時には、どうしてそこまで人気が…?とやや不思議だったのだが、前回のトッパンホールにおけるソロ・リサイタルを聴いて、深く納得した。全てが無伴奏、たったひとりきりで、休む間はなし。かなりハードな一夜になると思いきや、これが実に楽しかったのだ。
なにより、そのふくよかな音。これぞクラリネットといった、一音一音に膨らみがある心地よい響きなのである。一般的にいって、現代音楽専門の奏者は(もちろんヴィトマンは古典も吹くけれども)、鋭い音、急速なクレッシェンド/デクレッシェンドを武器にしている場合が多いが、ヴィトマンはまるで、現代音楽を古典のように柔らかく鳴らす。他方で、微分音から高次倍音、グリッサンドや奇妙なヴィブラート、そしてさまざまな重音まで、特殊奏法は、唖然とするほどに自由自在。こうした「幅」から現出するのは、いかめしい難解さではなく、軽やかな機知をたたえ、時には扇情にまでも針が振れる、一種のエンターテインメント性なのだった。
ヴィトマンの人気の秘密はおそらくここにある。作曲家としても演奏家としても、最先端の「現代音楽」技術を駆使しながら、根本はどこかポップ。ふと考えてみれば、これはクラリネットという楽器の特性ともいえるのではないか。たぶん、この人は骨の髄までクラリネット吹きなのだ。
クァルテット・エクセルシオ

西野ゆか
25年のエク活動で、本当に沢山の現代作品を演奏させていただきました。クァルテットで演奏するという事はまず指揮者がいないわけで、作り上げるまでの過程は想像以上に手間がかかります。大変だ…と思いながらやっていた時、「現代作品にも沢山名曲があり、それは演奏されなければ今後残る事はないんだよ!」と熱い大友さんの一言。それ以来、積極的に取り組む様になったのです。
《狩》についてはきっと他メンバーが色々語っていると思いますので、私はヴァイオリン・ソロ《エチュードII》のお話を少しだけ。現代作品をソロで演奏するのは、なんと人生初の体験となります。《エチュード》と聞くと何かますます難解なのかと想像しました。実際、技術的にはとても難しいです笑! ただ、音楽的、和声的には祈りの歌の様に感じ、美しい不協和音が随所に散りばめられていたり、優しさや力強さもビシバシ伝わる作品。Widmannさんから直々にアドバイスなど聞けるのも大変貴重で、それを私なりに表現出来たらとワクワクしています。

北見春菜
今回、ヴィトマン氏との初共演及び、作曲者ご本人の前で演奏させて頂ける大変貴重な機会を頂き、公演に向けて緊張感も高まっておりますが今からとても楽しみです。
「現代音楽」と聞くと身構えてしまう方も多いかもしれませんが、普段の演奏会ではあまり耳にすることのできない特殊な奏法もたくさん盛り込まれており、音を聴きながら視覚的にも見て楽しんで頂けることと思います。特に弦楽四重奏曲 第3番《狩》では様々な奏法が効果的に使用されているため奏者側は非常にスリリングですが、緊張感の中にもユーモアあふれるパッセージが多く散りばめられたとても面白い作品です。
また、弦楽六重奏曲は、ロックのような激しいビートのリズムと民族風のエキゾチックな旋律が印象的な作品です。それぞれ違った性格を持つこれらの作品をぜひ見て聴いて存分にお楽しみ頂けましたら幸いです。

吉田有紀子
今回ヴィトマンさんとご一緒できる素晴らしい機会をいただき、大変光栄に思います。
これまでに様々な現代作品を演奏する機会がありましたが、ヴィトマンさんの弦楽四重奏曲第3番《狩》は中でも衝撃的な出会いでした。楽しげな雰囲気から一転、突然テクニック的、アンサンブル的にも難しくなり、脳みそフル回転で演奏していても、未だ次はどんな奏法!?と、あたふたしてしまう状態に笑ってしまいます。(もちろん真剣に取り組んでいるのですが…)
弦楽器の特性を活かし、聴くだけではなく、見ても楽しめる作品です。どんな世界が待っているのか、幕開けからお客様にわくわくしてもらえる演奏ができるよう、リハーサルを重ねて本番に挑みたいと思います!
皆さまのご来場を心よりお待ちしております。

大友肇
「弦楽四重奏」がこれほど刺激的なものになるとは!と驚かれるかもしれません。現代の音楽は、いつのまにやら「現代」を飛び越え「未来」に行ってしまっているかのようです。気を付けて、このスピードに遅れずについてきてください。どうかお聴き逃しなく!


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