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インタビューInterview

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巨匠から若手へ園田高弘 ベートーヴェン ツィクルス
後期 ~室内楽~ へ向けて
 

藤森亮一 Ryoichi Fujimori

小林美恵 Mie Kobayashi

豊嶋泰嗣 Yasushi Toyoshima

進行=
西巻正史(トッパンホール企画制作部長)

リサイタルにつづくシリーズ後期は、室内楽。 チェロ・ソナタ、ヴァイオリン・ソナタ、ピアノ・トリオという3つのジャンルから、ベートーヴェンの世界を紐解く。同時にもうひとつのテーマは、若手とのコラボレーション。パートナーに選ばれた、藤森、小林、豊嶋の各氏に、巨匠との真剣勝負を前に胸のうちを語ってもらった。


トップバッターは藤森さんですね。園田さんとはN響で共演されてますよね。

藤森: ええ。でも、園田さんと最初にお会いしたのは、高校生の時なんです。学校の廊下でチェロをさらっていたら「君、静かにしたまえ」って(笑)。覚えていらっしゃるかどうかわかりませんけどね。だからとてもこわくて厳しい方、という印象が拭えません。今から緊張しています。

園田さんは、N響の定期でブラームスの2番のコンチェルトを弾いた時に藤森さんが弾いた三楽章の有名なチェロのソロが素晴らしかったので、今回是非共演したいとおっしゃっていました。

藤森: ますます緊張します。しかも、園田さんの指定ですべて暗譜で弾くんですよ。
豊嶋: えっ!楽譜を見ない演奏会は滅多にないから大変だね。
藤森: そう。特に僕たちのようなオーケストラプレーヤーにとってはね。でも今回の演奏会はそういう覚悟でやらないとダメだと思う。気を引き締めるために、家の一番目につくところにチラシを貼ってるんだけど(笑)。
小林: ベートーヴェンだけで一晩の演奏会を弾くって、どういう感じかな。私ね、プログラムにベートーヴェンが1曲あるだけでも、健康じゃないと絶対に弾けない。精神的に悩みがあったり落ち込んでたりしたら、曲に負けちゃう、というところがあるんですよね。だからそれが3曲あったらどうするんだろうって。今から思ってます。
藤森: 僕はバッハがそうですね。1曲あるだけでも金縛りになっちゃう。
豊嶋: ヴァイオリニストはバッハってあんまり弾かないからなぁ。
藤森: チェロはソロの曲が少ないから。リサイタルだったら、2回に1回はバッハが入るもん。それにオケやってると、ベートーヴェンはしょっちゅう弾いてるし、気楽に入れる部分もある。
豊嶋: そうね。ベートーヴェンはシンフォニーとかよく演奏するから、ニュートラルになれるところがあるよね。

出発点であり、戻る場所みたいな

豊嶋: そうですね。オケの人もそうだけど、クァルテットやってる人にとっては特にそうかもね。

とすると、豊嶋さんも藤森さんも両方やっていらっしゃるから、ベートーヴェンは身近ですよね。クァルテットは全曲弾いてらっしゃいます?

豊嶋: 一応全部やってますけどね。でも、まとめてじゃないんです。まとめてやったらまた全然違うんだろうと思いますけどね。クァルテットやってたら一度は通らなきゃいけない道なんでしょうけど、それだけのエネルギーをつぎ込むのはやっぱり大変。
藤森: 僕は中期の「ハープ」だけやってないんですけど、後は全部やってます。
小林: 私は数えるほどかな
藤森: ベートーヴェンて、その場で集まってパッとできる曲って限られてますよね。
豊嶋: 何か深刻な感じがあるのかな。ベートーヴェンて偏屈だったっていうじゃない。だから、ある程度不健全なほうがいいんだと思うよ。
小林: そうかもね。でも健康じゃないと、きっとその深刻な感じを受け止めきれない!

小林さんもソナタ3曲ですね。

小林: 10番は園田さんとなら是非弾きたいとお願いしました。思い返せば私、生まれて最初に聴いたレコードがベートーヴェンのヴァイオリン・コンチェルトだったんですよね。その頃家にあった唯一のレコードだったからなんだけど。
豊嶋: それはちょっと凄いね。子供の頃は何て退屈な曲かと思ってた。
藤森: 僕は「運命」と「ピーターと狼」。
豊嶋: まぁ一般的だね(笑)。
藤森: 僕も思い出したんだけど、ベートーヴェンて一番嫌いな作曲家だったんですよ。「運命」が入門曲だったのに!それが高校の時かな、「第九」の三楽章を聴いて、これかぁ!と思っちゃった。そのうち今回弾く4番と出合っていっぺんに全部好きになった。今では一番好きな作曲家かもしれない。
小林: 私はね、小学生だったかな。テレビでパールマンとアシュケナージの「クロイツェル」を聴いて、次の日のレッスンで先生に次何弾きたいかと聞かれて「クロイツェル」って言ったの。そしたら「まだ早い!」って。それで、私は「クロイツェル」は弾いちゃいけないんだ、みたいなトラウマができちゃった(笑)。
豊嶋: それで、最初に弾いたのはいつなの?
小林: 演奏会で弾いたのは7年くらい前かな。なぁるほど難しかったですけど、その時は弾いたことに満足しちゃいました(笑)。
豊嶋: 「クロイツェル」と「スプリング」を弾かないで一生終わるヴァイオリニストはいないでしょう。もちろんピアニストもそうだけどね。それにしても、園田さんはベートーヴェンのイメージが強いね。
小林: でも最初に留学なさったのはフランスだったんですよね。
豊嶋: 「エンペラー」ばかり弾いていらした時期がありましたからね。

チェリストにとって、ベートーヴェンはどんな存在ですか?

藤森: バッハとベートーヴェンが対等かな。旧約聖書と新約聖書みたいな感じですね。避けて通れないのは一緒です。

豊嶋さんは数年前に園田さんとヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会を行ってますよね。全曲を弾き終えてみて、どんな印象をお持ちですか?

豊嶋: 全曲と言っても、どれも若い頃の作品なんですよ。クァルテットとかピアノ・ソナタに比べたら、少し世界が狭いのかなという気もするけれども、エッセンスは厳然とありますね。初期のどんなちっちゃな楽章でもベートーヴェン以外ではあり得ないな、という。
小林: 園田さんはいろいろアドヴァイスをくださいました?
豊嶋: 相当しごかれました(笑)。まず、今はもう出ていないような古い楽譜を貸してくださって「これで勉強しておいで」って。
小林: 指づかいとか?
豊嶋: それにアーティキュレーション(弓づかい)とかね。楽譜に関しては、演奏家の伝統を踏まえてという方ですから、ベートーヴェンの時代に近かった演奏家がやっていたニュアンスなんかがわかってきて―。

演奏の系譜、歴史の蓄積の上に今の演奏があるという考え方をしっかりとお持ちですよね。

小林: 私も、一度ベートーヴェンがテーマの演奏会で「ロマンス」をご一緒したことがあるんですけど、その時、それこそ巨匠と言われる演奏家の名前を次々に挙げられて、お宅にお邪魔するとレコードやCDを聴かせていただきました。お話を伺うたびに、なるほど、そういうことかって眼から鱗が落ちた。
豊嶋: でもさっきの話に戻っちゃうけど、ベートーヴェンて、お客さまに聴かせるっていうより、演奏家が作曲家と格闘している感じがあるんですよね。実際やってみてそうだし、聴いてるほうにそういうことがあからさまに伝わってしまう。ベートーヴェンがそういう人だったんでしょうね。
小林: 最近ベートーヴェンが流行っているけど、今の時代だからこそ、その忍耐力が求められているのかもしれない。忍耐の先に見えるものがあるのかもしれないって。

苦労してる時代はベートーヴェン?そう言えば、バブルの頃はモーツァルトが流行りましたよね。

小林: ベートーヴェンは実際、苦労してたの?
豊嶋: 財テク家だったって話もありますよね。

モーツァルトなんかと違って、スケッチブックなどには明らかに格闘の後が読み取れますよね。

豊嶋: 何だかんだ、そうやって考えさせられちゃうところがベートーヴェンなんだよね。何なのよってみんなで議論しちゃう。演奏家にそんなことばっかり考えさせる。だから一生のテーマだろうし、人生賭けて取り組む普遍的な価値があるんだと思いますね。

園田高弘(ピアノ) ベートーヴェン ツィクルス ~室内楽~

Vol.1 チェロ・ソナタ

2003/4/18(金) 19:00

藤森亮一(チェロ)

Vol.2 ヴァイオリン・ソナタ

2003/6/23(月) 19:00

小林美恵(ヴァイオリン)

Vol.3 ピアノ・トリオ

2003/7/3(木) 19:00

豊嶋泰嗣(ヴァイオリン)/大山平一郎(ヴィオラ)/堤 剛(チェロ)

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