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インタビューInterview

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ピアノと私と音楽と。心のまま、自由に奏でたい  

若林 顕 Akira Wakabayashi

 今回の二夜にわたる公演は、自分の新しいスタートにしたいと思って企画したものです。3日前に第一夜を終えたばかりですが、トッパンホールはお客さまとコンタクトしやすいし、あたたかな雰囲気がいいですね。今また次回へ向けて気持ちを高めています。

 私がピアノを始めたのは8歳のときでしたが、実はその頃からピアノに限らず真似が非常に上手くて(笑)。ルービンシュタインやコルトー、シュナーベルなどを聴いて、耳からの印象を自分のフィーリングにリンクさせて、自己流の演奏を楽しんでいました。心のままに弾くことが第一で、技術的な面や曲を解釈することには意識がなかったですね。その後、中学生で田村宏先生と出会い、楽語の解釈やリズムのとらえ方から曲の構造、指や腕の使い方まで、基本をみっちり指導していただきました。当時テレビで見た、ベルリン・フィルとカラヤンのリハーサル風景で、カラヤンが、楽器を弾くときに手の都合でつくアクセントなどをことごとく排除させるというか、奏法にまかせず、曲としてどうあるべきかを実現させるという、ある意味非常にベーシックなことをしていて、それが田村先生のお話とまったく同じで。わからないでいたたくさんのことが、自分のなかで次々クリアになっていきました。そこから自分の音楽づくりを見直し始めて、これまでずっと勉強を重ねてきました。
 そうしたら光栄にも、今では「正統派ピアニスト」と呼んでいただくようにまでなって。

 でも私は、音楽を“自分”から発信していきたいと思っています。曲の背景にある作曲家の想いや時代感覚などを参考にしながらも、“この曲はこうあるべき”という形や理由は自分の内側に見つけて、そこから音楽を解放していきたいと考えます。自らの感性や感覚を信じて曲と向き合い、そこから生まれたイメージを素直に表現する。でもそれには、飾らない状態で曲と対峙する、という勇気もいると思っています。

 尊敬しているピアニストのひとりにリヒテルがいます。中学一年のときに東京文化会館で聴いたシューベルトのソナタは、ピアニストを志すきっかけのひとつにもなりました。聴いているうちに異次元にいる感覚に陥って、居場所や音楽を聴いていることから離れて、意識がどんどん膨らんでいったんです。拍手の音で現実に引き戻されたという、それは本当の話です。
 リヒテルは、アカデミックな面を踏まえながらも、演奏の奥に彼自身の無限大かつ調和の世界を感じさせる、すごいピアニストです。技術的な面だけみると、演奏家としては不器用なほうかも知れませんが、表現される世界は超弩級。自分がどう弾きたいかを徹底しているからだと思います。後進の私たちも、アカデミックなものにとらわれすぎず、曲から与えられたインスピレーションを自分の心の震えとして音の波動に乗せる、というような、自らの感性を信じて表現していくことが大切だと考えます。

 今回ショパンとラフマニノフを選んだのは、幼少時からずっと、自然体でその音楽と向き合えてきた作曲家だからです。ともに大ピアニストで、楽器を熟知して書かれた作品はピアノの魅力を大きく引き出すものです。ピアノはオーケストラを凌ぐ楽器だと思います。それに、鍵盤や指のどの面で弾くか、また椅子への座り方ひとつで、倍音の高さを微妙にコントロールしたり、実にいろいろな音色が表現できる。一度鍵盤を叩いたら音程や音色が変えられないというものではなく、ピアノは歌う楽器だというのが私の持論です。
 第二夜は、一夜とまた趣向の違う、エンタテインメント性の高い曲を織り交ぜています。より喜びに近いといいますか、純粋に聴くことを楽しんでいただける演奏会にしたいですね。お客さまには、すべてを私に委ねてリラックスしていただきたいです。緊張するのは、私だけで充分(笑)。でも私も心を全開にして、思いのたけを解き放ちたいと思いますので、ぜひおつき合いください。

(2005年1月17日/トッパンホール楽屋にて)

若林 顕(ピアノ) ショパンとラフマニノフの世界 第2夜

2005/3/17(木) 19:00

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