TOPPAN HALLTOPPAN HALL

MENUCLOSE
 

TOPPAN HALL

TOPPAN HALLTOPPAN HALL

MENUCLOSE
 

TOPPAN HALL

インタビューInterview

Back

時代楽器ならではの薫りや叙情性、物語的な魅力を届けたいオランダ在住の気鋭の若手奏者が語る、
フォルテピアノへの思い、鈴木秀美との共演
 

平井千絵 Chie Hirai

 初めてピアノを弾いたのは、3~4歳だったでしょうか。家にピアノがあったことがきっかけで始めて、音楽教室から高校、大学まで桐朋で学びました。同期には、岡田将さんや田山正之さんといった方がいます。子供の頃から好奇心が旺盛で、お友達と遊ぶほかに本を読むのも好きでしたし、いろいろな事に興味がありました。当時は童話作家や画家になりたい、と思っていたのを覚えています。

 フォルテピアノに実際に触れ、弾きはじめたのは大学卒業後です。いろいろな音楽を聴くのが好きでしたので、それまでにフォルテピアノの演奏会に行く機会もあったのですが、大学を出るまではピアノだけを弾いていました。フォルテピアノを弾くきっかけになったのは、実は鈴木秀美さんとの出会いです。大学在学中にチェロ弾きの友人と受けたレッスンは、友人も私も楽器はモダンでしたが、それまでに受けたものとはまったく違う切り口で新鮮な驚きでいっぱいでした。その数日後、秀美さんが小島芳子さんとメンデルスゾーンを共演なさったのを聴いたことが、のちにフォルテピアノへの道を開いていくことになります。素晴らしい演奏会で、生で聴くフォルテピアノ、ライヴの醍醐味に感動しました。ただ、強烈に惹かれる一方で楽器の繊細さに畏れを感じる部分もあり、実際に触れてみたい衝動と躊躇との間でその後何年間か悩みました。でもついには、アンドレアス・シュタイアー氏の演奏会(*)で受けた強烈な感動が最終的なプッシュとなり、フォルテピアノの世界へ足を踏み入れることになりました。

 私にとってのフォルテピアノの魅力は、楽譜から読み取って感じたことを素直に弾いたとき、出てくるものが音楽的に何の無理もなく自然だというところです。初めて弾いたときには、音楽がのびのびと自由に語ってくれたことに心が震えました。フォルテピアノでは、室内楽でも自分が楽器の限界を知ってさえいれば、力の加減をせず楽譜に書かれているとおりのことを素直に思う存分弾いても、ほかの楽器と対等でいることができます。私にとってフィジカルな感覚が影響する部分は、演奏し表現する上でとても大きく重要です。また、フォルテピアノが活躍する時代に入ってから、その前の時代と比べて楽譜上にあらわされる指示・指定が増えたとは言え、抑揚の付け方、台詞回しというような多くのことは、それまでの時代のように、演奏家の音楽家としての知識と趣味にまかされています。時代の言葉を音にするセンスを磨ける限り磨いて自信をつけ、とことん突き詰めたらあとは解放して自由に演奏する。作曲家のメッセージをそういった作業を通して伝えていく喜びもあります。それから、フォルテピアノが作られていた時代はひとつひとつが本当の手づくりでしたから、楽器によって個性の違いが大きくあります。そのどれもがとても魅力的なのを、広くみなさんに知っていただきたい思いもありますね。

 現在は、オランダを中心としたヨーロッパが主な活動の舞台です。今後は、モーツァルトイヤーに関連したコンチェルトの機会がチェコやドイツ、オーストリアであります。ソロでは、オール・ショパンプログラムでのツアーが始まっています。室内楽活動の基本はハルシオン・アンサンブルという管楽器との五重奏で、この夏にはCDをリリースしました。ベートーヴェンと、彼に傾倒していたというベルギーの作曲家、ファン・ラノワの作品をカップリングしたもので、モーツァルトを中心にしたセカンドCDも来年9月に発売予定です。室内楽の公演はいろいろな種類が、ちょくちょくスケジュールに入ってくる感じです。

 今回トッパンホールで演奏するメンデルスゾーンのチェロ・ソナタは、以前から大好きな曲です。メンデルスゾーン自身に関心を持ちはじめたのは最近で、これからたくさんの発見をしていきたい作曲家のひとりです。アルペジョーネ・ソナタのシューベルトやソロで取り組んでいるショパンも含め、今は18世紀の終わりから19世紀中ごろまでのロマン派へ移行していく時期に、その時代背景も含めて興味があります。以前からロマンティックなものに惹かれる傾向はありましたが
 秀美さんとの共演は、今からとても楽しみにしています。大先輩への尊敬の思いもありますし、一緒に演奏していて、おなじ言語で話す感覚が持てる方です。安心して大はしゃぎできるといいますか、丁々発止、思いきって演奏を楽しみたいと思っています。
 トッパンホールには、園田高弘先生ご主催のコンサートで一度出演したことがあります。フォルテピアノは会場に非常に左右されやすい楽器ですが、トッパンホールでは何の心配もなく弾くことができました。演奏中に新しいアイディアがどんどん湧いてくるほどで、素晴らしい空間だと思います。当日は、時代楽器ならではの薫りや叙情性、物語的な魅力などを楽しんでいただきたいと思っています。

1996年紀尾井ホールでの、シュタイアー初来日公演。クリストフ・プレガルティエン(Ten)との共演だった。

鈴木秀美&平井千絵 デュオ コンサート

2006/1/21(土) 15:00

鈴木秀美(チェロ)/平井千絵(フォルテピアノ)

このページをシェアする♪

Page top

ページトップへ