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インタビューInterview

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先入観や誤解を捨てて、もっと自由な気持ちでたくさんの曲を聴いてほしい  

清水和音 Kazune Shimizu

聞き手=
トッパンホール

新人の発掘・育成に力を注ぐトッパンホールが、実は同じくらい力を入れているのが、日本の中堅アーティストのコンサート。経験を積み円熟するはずの充実期に、さらなる自身への挑戦と飛躍を課すプログラムに取り組む機会を提供することで、彼らのメルクマールとなるコンサートができないだろうか。 そんな思いから誕生したシリーズ〈おとなの直球勝負〉。着実な演奏活動を繰り広げる国内屈指の大型ピアニスト清水和音が、スクリャービンとショパンのプログラムで登場します。


今回は、前半に初期のスクリャービン、後半にショパンの後期作品を並べた非常に凝ったプログラムです。独自の視点をもった選曲ですね。

 ショパンとスクリャービンは、組み合わせとしてすごく合ってる感じがするんですよ。しかも今回は、ふたりの一番美味しいと思うところを選曲しました。

スクリャービンから、お話いただけますか?

 スクリャービンの初期の作品は、大変愛着を持ちやすいと思います。彼は初期と後期で大きく変貌した人で、僕は若いときには、ソナタの10番など後期の無調の世界に共感していましたけど、今は調性のある初期のほうが好きですね。若いころの作品の完成度は、あらゆる作曲家のなかでも群を抜いていて、とても早熟な人だったと思います。

プレリュードは、ショパンを手本にしたと言われています。

 同じスタイルですよね。でも僕には、スクリャービンのほうがラブリーだな(笑)。弾いていて何とも気持ちがいい音楽です。ロシアものは特徴として、理性や知性といったものを超えて身体を直撃する肉体的な面を持っていますが、これはその代表的な作品でしょう。24曲24種が明解に書き分けられていて、かつ音楽としてもわかりやすい。すごい曲集です。
 意外に弾かれていないからか、その魅力に比して知られざる作品になっているのはもったいない。もっとたくさんの演奏家に弾いてもらいたいし、みんなで有名にしなくちゃいけない曲だと思いますけどね。

作品9はいかがでしょう。

 これも、何とも妖しくていい曲です。出だしがちょっとドキンとする感じなので、最初に弾く曲にするかどうか迷ったんですが。主和音ではじまらないし、左手だけですしね。スクリャービンらしい何とも言えないもどかしいさ、ただひたすらに美しい世界が楽しめる曲です。

大変なセンスを持っていた人だったのでしょうね。

 同年代の作曲家にはラフマニノフやラヴェル、シェーンベルクなどがいる、ものすごくバラエティがあった世代ですね。20世紀初頭というのは、何か宝庫という感じがします。僕にとっては一番魅力的な時代です。

ショパンについてはいかがでしょうか。

 今回取り上げる曲は、ショパンの最高傑作、それぞれのスタイルの最高の曲です。ショパンは初期作品が人気ですが、本領は後期にこそある。でも、今回弾くスケルツォの4番をはじめ技術的に難曲が多いので、案外取り上げられる機会が少ないままきてしまった気がします。確かに音楽的にも、メロディーを口ずさめるようなところから離れて、ポリフォニックななかに訳のわからない内声みたいなものが出てきたりしますが、でもこれが非常に魅力的です。後期作品には音の流れに、次へつなぐのに何か迷いみたいなものを感じる部分もあって、悩んでるショパンが美しいというか。僕の感覚ですけど。

ベートーヴェンじゃないけれども、後期独特の世界がありますね。

 そう。それに、この時代のほかの作曲家——例えばシューマンやリストと比べても、作品の完成度のレベルが違います。今回の公演では、それをそのままを聴いていただきたい、表現できればいいな、と思っています。
 シューマンやリストは、演奏家自身がいろいろなアイディアを持って、ある種コンポーズする能力がないと上手くいかないけれども、ショパンは弾き手がただ素直になることが正しいというか、素材のいい音やいい響き、フォームのよさだとかね、そういうものを持っているピアニストが普通に弾くのがいちばんいいのかも知れません。ある意味、とても“上等な音楽”ですよ。優れた資質を持った人にしか合わないんじゃないかという気もしますね。

最後に、お客さまにメッセージをいただけますか?

 トッパンホールでは速いパッセージでも響きすぎず、音の粒々がすごくクリアに聞こえると思います。少しなじみの薄い演目かも知れませんが、それぞれのピアニズム・作曲家の醍醐味を存分に楽しんでいただけるプログラムです。ぜひじっくり、音の響きを楽しんでいただきたいですね。

〈おとなの直球勝負 6〉清水和音 スクリャービンとショパン―究極のピアニズムを求めて

2006/2/18(土) 19:00

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