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インタビューInterview

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ミュンヘン優勝後、前よりもっと練習するようになりました。
成長の軌跡・私の現在を、存分に聴いていただきたいです。
 

趙 静 Zhao Jing

聞き手=
トッパンホール

2002年秋、大きな期待を込めてエスポワールシリーズに起用。3年前の春に巣立った趙静の、待望の凱旋公演がいよいよ近づきました。ベルリンでの生活、演奏家としての現在、名手・清水和音と聴かせる公演への想いをききました。


改めて、昨年はミュンヘン国際コンクール優勝(2005.9)おめでとうございました。難関で知られる世界的コンクールを制して、1年。12月の公演は、その記念でご用意しました。

 ありがとうございます。チェリストとして今後を拓いていく、大きなきっかけになったと思います。でもコンクール優勝というのは、決まった課題・ひとつの目標へ向けて充分に練習を積んだあとの結果ですから、その質を維持することも大変。今はそこを保ちながら、さらに上をめざしていくぞという気持ちがとても強くあります。以前よりもっと練習するようになりました。それに、コンクール優勝は夢のひとつではあったかも知れませんが、やっぱり“いい音楽をする”という大きな夢を叶えたいですね。究極の夢です。

以前のインタビュー(トッパンホールプレス創刊号2002.9)でも、“上手いと言われるより、心に残りましたと言われたい”という言葉が印象的でした。音楽家として何を表現していきたいですか?

 大事にしていること、伝えたいことで言えば“愛情”でしょうか。家族、恋人、友人などいろいろな愛情があって意味も広いわけですが、生きていく上ですごく大切なことだと思うんです。私個人の好みですけれども、理性が勝った演奏よりも、多少音に傷があったりリズムがよれたりしていても、何かを届けたいという情熱を感じる音楽、人としての暖かさのある演奏に断然惹かれます。どちらにもそれぞれのよさがありますし、勉強のためには理性的な演奏もどんどん聴きたいですけれどね。アタマとココロ冷静と情熱、というのでしょうか、両方をバランスよく持てたら理想かも知れませんが、ほぼあり得ないんじゃないか、と思っているんです。

今回の公演はどうなりそうでしょうか。

 それはもう、アツアツなもので(笑)!——今回は、ロシアものばかり3曲揃えました。故郷の中国がロシアの隣国で、同じ大陸に生きているということがあるのかも知れませんが、ロシアの音楽にはシンパシーを感じます。プロコフィエフ、ラフマニノフ、ショスタコーヴィチ。3人ともひどくロシア的ですよね。プロコフィエフもラフマニノフも実にアツアツなロシアもの、ショスタコーヴィチも、怖さ、寂しさ、強さや厳しさといった冷たい印象のなかに、突如立ち上ぼる一瞬の暖かさがあって、とても人間を感じます。

確かに、大陸の、丸一日電車に乗っていても景色が変わらないような、時間の感覚も消えてしまうような大地から生まれてくる、底知れない音楽の大きさがありますね。

 語弊があるかも知れませんが、血液があまりサラサラしていない感じといいますか、私はそういうのが大好きなので(笑)。ショスタコーヴィチは、エスポワールの第1回で松本和将さんと共演しています。それから、ラフマニノフは今回共演する清水和音さんと、日本デビューリサイタルで弾きました。9年前の話です(1997・10 カザルスホール)。

清水さんとの共演はいかがですか?

 和音さんとは、デビューのときと、あとは昨年の暮れに大阪でご一緒しています。常に研究、常に進歩していて、実によく勉強なさっているその姿勢は、日本で活躍する音楽家のなかでも貴重だと思います。コンサートがいわゆる“オシゴト”になっていない。お会いするたび、取り組んでいる曲や作曲家についてお話を聞くことができます。それから、指がすごい。すべて指でコントロールできて、出したい音をそのまま出せる方なんです。そして音がものすごくキレイ。幸せを感じるくらい(笑)。人間的にも大きくて面倒見がよくて、日本に来た当初からいろいろお世話になっています。

趙静さんは、人に恵まれている印象がありますね。

 堀 了介先生が今への道を拓いてくださり、15歳で日本へ来て、その後19歳でベルリンへ渡りました。チェロでは、マリオ・ブルネロ先生、ゲオルグ・ファウスト先生、ダヴィット・ゲリンガス先生に師事して、それぞれまったく違う個性を持つ方たちから多くのことを学びました。ベルリンのアカデミーではオーケストラの一員として、アバドやハイティンク、ヤンソンスなど素晴らしい指揮者と一緒に音楽をつくることができましたし、いろいろな曲の解釈をたくさん聞いて本当に勉強になりました。ゲリンガス先生には今もついています。最近では、作曲家や曲のことについて深くお話してくださる時間が長くなってきて、それもとても勉強になっています。チェリストとしてのご自身の経験から、演奏家として生きていく上での道も指し示してくださいます。とても不思議な方で、いろいろなお話のなかで、いつも絶妙なタイミングと言葉で説得力あるすごい表現がでてくる。素晴らしい方です。最近、指揮者としての先生と共演することがでてきました。チェロを熟知した方ですから、とても楽しいです。ベルリンで、11月にレコーディングも予定しています。

それは楽しみですね。そういえば、最近楽器を変えられたとうかがいました。

 日本に来たときからずっと斎藤秀雄先生の楽器を使わせていただいていたのですが、今はグランティーノをお借りしています。実は以前はあまり、楽器の重要性を考えていなかったのですが、ゲリンガス先生やロストロポーヴィチさんの楽器は本当に弾きやすいんですよ! 状態がよくて弾きやすい楽器があればできることが広がりますし、演奏家には音がいちばん大切、でも体の大きさを含め相性の問題もあるし、楽器との出会いは、本当に“縁”ですね。当面は、今のグランティーノとやっていくと思います。

最後に、お客さまへメッセージをお願いします。

 ロシアものは、自分のなかにある音楽にとても近いと思っています。それで今回は3曲ともロシア作品にして、アツアツのコンサートをお届けすることにしました。寒い時期なので(笑)!どの曲もピアノパートが難しいことで知られていますが、共演は清水和音さんですので、何の不安もなく、きっと大きな音楽を一緒につくることができると思います。エスポワールを聴いてくださったお客さまにはぜひ、4年間の成長も聴いていただきたいと思います。みなさんにお会いできるのを楽しみに、お待ちしています。

趙 静 ミュンヘン国際コンクール優勝記念趙 静(チェロ)&清水和音(ピアノ)

2006/12/13(水) 19:00

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