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インタビューInterview

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ショパンを中心にストーリー性を持たせたプログラム。
トッパンホールで弾くのが、本当に楽しみです。
 

ロジェ・ムラロ Roger Muraro

 今回企画なさったシリーズ〈ピアノの鬼才〉は、大変興味深いですね。存在感といいますか、このように個性の違うアーティストを、本当によくラインナップなさったと思います。
 先ほどホールで、少しの時間ピアノを弾かせていただきました。見事な空間です。フォルテシモからピアニシモまで、何でも受容してくれる。大変バランスよく音が混ざりながらも、一方ですべての音が明瞭に聞こえます。そのうえ、空間の広がりがきちんと保たれている。さらには、音質のふたつの要素——温度と光彩を、それぞれを犠牲にすることなく絶妙のバランスで両立させられる、極めて素晴らしい特徴を持つホールだと思います。ピアノとホールの相性もとてもよいのでしょう。生まれたヴァイブレーションが、よい形、よいタイミングで客席へ放たれ、その手ごたえが舞台にすぐかえってきます。2月の公演がますます楽しみになりました。

 今回は、リスト、アルベニス、ショパンの作品をお聴きいただきます。トッパンホールでなら、ノクターンの優しさや濃密な雰囲気、リストのオーケストラ的なボリューム、アルベニスのピアノ作品独特の光の感覚といったところを、存分に表現してみたいですね。
 このプログラムは、ショパンを中心に組み立てました。実は1月発売予定のCDのレコーディングを終えたばかりなので、とてもよく弾きこんであるのです。録音した曲のなかから“彼が書いた特に美しい曲は?”という目線で4曲を選びだし、メインには「葬送ソナタ」を据えました。そこに“ショパンへの憧れ”という視点でリストとアルベニスを加え、ふたりの作品から「葬送ソナタ」と同じく宗教性を持つ曲を選曲することで、プログラム全体に関連性とストーリー性を持たせています。

 リストにとってショパンがいわば、アイドルのような存在だったことはよく知られていますが、実はアルベニスも、ショパンを非常に敬愛していた作曲家でした。コンサートピアニストとしても活躍した名手で、ショパンの曲はすべてレパートリーに加えていたといいます。作品のスタイルはショパンとかなり違いますが、アルベニスの曲のなかには、ショパンのモチーフを用いているものなど、明らかにその影響の跡を見てとれるものがあります。
 今回、リストは「詩的で宗教的なしらべ」、アルベニスは「イベリア」を選びました。イベリアの3曲めが宗教的な儀式を題材にしていることに加え、それぞれの1曲め、「祈り(Invocations)」と「喚起(Evocacion)」の原題が似ていて、ニュアンス的に近いものを並べてみるのは面白いかな、と思ったことがあります。
 ショパンと、“ショパンに対する憧れ”を持つふたりの作曲家——。そこに宗教色のある選曲を絡ませて、ひとつのストーリーとして仕立て掘り下げてみたい、と思ってつくったプログラムです。もうひとつ言えば、3人には、フランスの出身者ではなく、また民族的な色が強いという特徴を持ちながら、パリでその才能を開花させた、という共通点もありますね。同じ内容で2月14日に、パリのシャンゼリゼ劇場でリサイタルを行う予定になっています。

 そのほかでは現在、2008年のメシアン生誕100年に向けて準備をしています。プログラムをつくるときには、曲自体が語るストーリーを大切にしながら、曲と曲とのつながりやひとつひとつの曲が音楽史上で示している役割、それらがどういう風に歴史のなかで引き継がれているのか、といったことを考え、つながりを見い出し、そのラインを強調するような形で組み合わせていくのが好きですね。メシアンでも面白いことを考えていて、自分でもよくできたな、と思うものになりました(笑)。

 クラシック音楽は長い歴史の上に“伝統”を持ちますが、伝統は、現代的な思考や哲学をより発展させるための助け、自由に歩くための大地であるべきだと考えています。これからも感受性をたくさん働かせて、常に新しい発見、新しい表現を探していきたいですね。

〈ピアノの鬼才 1〉ロジェ・ムラロ ピアノ リサイタル

2007/2/28(水) 19:00

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