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インタビューInterview

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心技体のバランスが揃ったアルティの“いま”
溢れる歌心で名曲に挑む
 

矢部達哉 Tatsuya Yabe

聞き手=
トッパンホール

 昨年のトッパンホールでのコンサートは、東京で初めての本格的な公演として、とても重要な節目ととらえていました。そこで、ベートーヴェン後期の弦楽四重奏曲2曲で「勝負」に挑みました。素晴らしいホールと質の高いお客さまに支えられ、僕たち自身が納得のいく、記念すべきコンサートとなりました。以降の演奏会でも「あの時のように」というひとつの基準ができたように思います。

 今回もメインはベートーヴェンで、気力漲る中期の大傑作《ラズモフスキー第3番》です。地獄のように速いパッセージの終楽章が有名ですが、僕たちのスタイルはヴィルトゥオーゾ的というより、カンタービレを大切にしているので、重厚な中にも歌謡性のある、そんな《ラズモフスキー》になると思います。

 前半の《弦楽四重奏曲第5番》は、ベートーヴェン初期の作品。後期のようなクァルテットの完成形が示された曲ではないぶん、僕たち自身が演奏で補わなければならないところがあり、実は難しい。後期の作品は、全員死ぬほど気持ちを込めて弾けば、音程が少しくらいずれてもそれほどダメージにはならないのですが、初期は完璧でないと傷になってしまう。それだけに、最高度の技術が要求されます。そういう意味で、《ラズモフスキー》も含め、今回のプログラムは前回同様「挑戦」です。

 武満徹さんとはメンバーそれぞれに思い出があり、偉大な作曲家でありながら、同時にとても身近な思い出が生きています。《ア・ウェイ・ア・ローン》は、日本人の持っている独特の感性にフィットするということもありますが、弾いていて幸せだなと思える、現代に生まれた魔法のような作品です。アルティにとっては、今後も弾き続ける曲だと思います。

 アルティは結成して10年が過ぎ、それぞれソロやオケでの活動も忙しく、クァルテットに割く時間が限られるなかで、メンバーがお互いに敬意を払い、一緒に音楽をやれる喜びを感じながら成長してきました。楽譜を読み込む作業を繰り返すなかで、音楽の表現や響きのバランスなど、クァルテットとしての音楽の方向性が一致してきました。アルティの特徴は、「カンタービレ」を追求していること。常に全員がたくさん“歌おう”とするけれども、同時にまわりを“聴いて”いるから、緻密さが損なわれない。ひとりひとりの表現意欲が高いなかでも、4人でひとつになろうという意識も強く、表現を犠牲にしないで調和できるようになってきました。そういう意味で、今は気力体力漲った心技体のバランスが一番いい状態にあると思います。

 僕にとっては、「室内楽=アルティ」。メンバーが集まると思わず顔がほころぶほどで、演奏していて幸せだと思える時間を与えてくれるこのクァルテットには、いつも感謝の気持ちでいっぱいです。このメンバーと一緒に演奏し、それをお客さまに聴いていただけることは、音楽家としての自分にとって最高の喜びです。

アルティ弦楽四重奏団

2008/6/26(木) 19:00

豊嶋泰嗣(ヴァイオリン)/矢部達哉(ヴァイオリン)/川本嘉子(ヴィオラ)/上村 昇(チェロ)

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