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インタビューInterview

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メシアンの曲に聴く「希望」、そして「祈り」
「メモリアル」を超えて受け継がれる名作に挑む
 

ポール・メイエ Paul Meyer

聞き手=
トッパンホール

 メシアンという作曲家は、自然や鳥などに大きな興味を持っていたこと、そして非常に信心深い人だったことがよく知られていますが、それに加えて、ハーモニーやリズムといった、彼オリジナルなものを丁寧に探求し続けた作曲家である点が、際立った特徴であると言えます。今回演奏する《世の終わりのための四重奏曲》は、20世紀を代表する傑作のひとつであり、生誕100周年である2008年はもちろんですが、これからも、おおいに演奏されるべき名作だと思います。

 この作品が作曲されたのは、第2次世界大戦中の捕虜収容所の中でしたが、必ずしも悲観的な音楽ではないと思います。敬虔なカトリックの信者として、戦争の影響を通して得た強い祈りの感情を、この曲を通して表現しているように感じます。非常にスピリチュアルな音楽ですが、「希望」が常に聴こえているのです。

 今回のプログラムでは、《世の終わりのための四重奏曲》を軸に据えながら、武満徹とドビュッシーのクァルテットも演奏します。武満は、教会のオルガニストとして宗教的な側面を強く感じさせたメシアンとは対照的に、非常に「印象派的」な作曲家だと思います。武満の作品には、彼がメシアンに強く影響を受けていたことを考えると不思議なくらい、メシアンの作品に表れるような宗教的なニュアンスは一切感じられず、むしろ映像的なものや自然に強くインスパイアされているように感じられるのです。

 一方ドビュッシーは、時代の中で革新的な作曲家で、それまでの音楽の形式や流れを変えてしまった特異な存在です。また、非常に繊細でリアルな感覚の持ち主だったという点で、武満と共通しています。かたやメシアンには「パワフル」という形容がふさわしいと思いますが(笑)、それは彼の信仰心から生まれたものだと思います。

 《クラリネットのための第1狂詩曲》は、もともとパリ音楽院における試験の課題曲として書かれました。非常に美しい曲で見事な構成を持ち、可愛らしいジュエリーのような輝きに満ちた作品です。ピアノ版とオーケストラ版の2種類あり、それぞれが違う魅力を持っています。このような小品であっても、ドビュッシーのオーケストレーションの力強さや、際立った色彩感など、才能を感じさせる見事な作品です。

 今回、矢部達哉さん、向山佳絵子さんと、ふたりの日本人アーティストと初めて共演します。ひとくちに「日本人アーティスト」といっても、どこで教育を受けたか、どんな経験をしてきたかで、持ち味がまったく異なってきます。それは、私たちフランス人にも言えることで、フランス人だからフランスの音楽を頻繁に演奏するとか、よりよく演奏できるとか、もはやそういう時代ではないと思います。そして、素晴らしい作曲家の音楽は、彼らの生まれがどこかといったことよりも、その作品が演奏に値する素晴らしい曲だからこそ演奏され続けている、それに尽きると思います。

 メシアン生誕100年というメモリアルイヤーだけでなく、これからもずっと長く演奏されるであろう傑作、そしてそのメシアンに影響を受け、あるいは与えた作曲家による優れた作品をトッパンホールで演奏することができるのは、今からとても楽しみです。

〈生誕100年記念 メシアン―光と闇 2〉世の終わりのための四重奏曲

2009/2/20(金) 19:00

ポール・メイエ(クラリネット)/エリック・ル・サージュ(ピアノ)/矢部達哉(ヴァイオリン)/向山佳絵子(チェロ)

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