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インタビューInterview

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仲間と演奏する喜びを胸に、
一つ一つの出会いを大切にしていきたい
 

ペテル・ヤルシェク Peter Jarůšek

聞き手=
トッパンホール

 私と、第一ヴァイオリンで妻のヴェロニカが中心となって7年前に立ち上げた私たちのクァルテットは、1944年にアウシュヴィッツの強制収容所で悲劇的な死を遂げたチェコ出身のユダヤ系作曲家、パヴェル・ハースにその名を因んでいます。日本では彼の作品が演奏されることはあまり無く、その存在はほとんど知られていないと聞いていますが、ナチスの時代に中央ヨーロッパで活動していたユダヤ人芸術家の多くは、ここヨーロッパでも、芸術的な功績に比してあまり知られていないのが現状です。初めて彼の作品を聴いたときからハースの音楽に深く魅了された私たちは、3つの弦楽四重奏曲をはじめ特筆すべき優れた作品を遺した彼の名前を団体名に冠し、その作品を積極的に演奏することで、より多くの人が彼の音楽を知る一助となることを願っています。

 ハースの作品には、師匠であるヤナーチェクの影響をはっきりと感じることができますが、それはひとつにはジャズの手法を取り入れているところ、そしてユダヤの伝統的な音楽の影響を色濃く受けているところです。また彼は、実験的な作曲手法にも積極的に取り組みました。たとえば弦楽四重奏曲第2番では、通常のクァルテット版にパーカッションを加えた別バージョンも作曲しています。歌曲集や映画音楽、オペラの分野でも優れた作品を遺した彼は、強制収容所という極限の状況においても希望を失うことなく作曲を続け、仲間とともに自作を演奏していました。そうした姿勢にも、共感しています。

 今回のプログラムでは、ハースの代表作のひとつである弦楽四重奏曲第3番とともに、ハースと故国を同じくするヤナーチェク、ドヴォルジャークの弦楽四重奏曲も演奏します。ヤナーチェクは、チェコの民俗音楽の中に、複雑なハーモニーの美しさと洗練されたメロディの妙を見出し、そこから音楽的なインスピレーションを受けていました。そうした民俗音楽へのこだわりは、弟子であるハースにも確実に受け継がれています。チェコという国は、中央ヨーロッパの多くの国と同じように、たいへん複雑な歴史を持ち、ひとことでチェコの「文化」といっても、歴史の中でこの地域に住んだたくさんの異なった民族の影響を受けています。このことは、先にお話したジャズやユダヤの民族音楽のように、さまざまなジャンルの音楽的な素材を創作の源に活用するという、チェコの作曲家の特質につながっているのではないでしょうか。

 私たちのクァルテットは、生まれ故郷を特に大切にしたハースという作曲家、そして、スメタナ・クァルテットのヴィオラ奏者としてその生涯をチェコの偉大な作品の紹介に捧げ、私たちの師匠でもあるミラン・シュカンパの影響を受け、チェコの巨匠による作品を頻繁に演奏していますが、ベートーヴェンからラヴェル、プロコフィエフにいたるまで、チェコ音楽以外の古今の偉大な作曲家の作品にも、等しくエネルギーを注いでいきたいと考えています。実際、この秋には、プロコフィエフの弦楽四重奏を収録したCDをリリースし、世界ツアーを行う予定です。

 クァルテットという仕事は、世界を旅するツアーが続くタフな仕事ですが、私たちは結成のときと少しも変わることなく、一緒に演奏することを心から楽しんでいます。心から尊敬できる仲間と、常に一緒に音楽ができるのは素晴らしい幸運だと、最近は特に思うようになりました。また、演奏旅行を通じて、コンサートに足を運んでくださる多くの方と出会えることは、私たちが活動を続けていくための大きなモチヴェーションになっています。

 私たちは日本が大好きで、数年ぶりの再訪がいまから本当に楽しみです。日本の文化にとても興味がありますし、何より素晴らしい人々との出会いが待っています。6月にトッパンホールで演奏できることを、心から楽しみにしています。

〈エスポワール スペシャル 9〉〈Pavel×ARCO 若手実力派クァルテットを聴く 1〉パヴェル・ハース・クァルテット

2009/6/30(火) 19:00

ヴェロニカ・ヤルツコヴァ(1st ヴァイオリン)/エヴァ・カロヴァ(2nd ヴァイオリン)/パヴェル・ニクル(ヴィオラ)/ペテル・ヤルシェク(チェロ)

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