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インタビューInterview

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トッパンホール ニューイヤーコンサート2010オールスターキャストで贈る、心浮き立つ室内楽の夕べ
時代を超えて愛される、モーツァルトとシューマンを聴く
 

川崎洋介 Yosuke Kawasaki

聞き手=
トッパンホール

川崎さんが参加したトッパンホールアンサンブルのCDは、発売から3年以上たった今でもロングセラーを続けています。

 本当?それは嬉しいね。渋いプログラムなだけになおさら嬉しい。第1集のベートーヴェンの2曲は、それぞれの収録の間に1年間のブランクがあって、改めて聴いてみると演奏が変化しているのが面白い。ライヴがCD化されるというのは、未熟な部分がいつまでも記録として残るようで残念でもあるし(笑)、でももちろん、多くの方に長く楽しんでいただけるのは、嬉しいことです。

トッパンホールアンサンブルへの出演は、2006年3月以来、約4年ぶりになります。

 本当に楽しみ。気心の知れたメンバーとふたたびトッパンホールで演奏できること、そして初めて顔をあわせる方々との共演ももちろん楽しみだけれど、やはり、前回の出演からいろいろな経験をしてきて、自分のプレイがとても上がってきているという実感があるので、改めて良いチャレンジの場にしていきたいな、と意気込んでいます。

コンサートの幕開けは、モーツァルトの《フルート四重奏曲第1番》です。

 この曲は、フルーティストだった母と、父(川崎雅夫さん)のヴィオラと、毛利伯郎さんのチェロでファミリーコンサートをしたときに演奏した思い出の曲。4曲あるモーツァルトのフルート四重奏曲はどれも非常に良い曲だけど、耳なじみの良さでは第1番がずば抜けていて、誰もが聴いたことのある曲だと思うので、ニューイヤーコンサートの、しかも冒頭を飾るにはぴったりだね。

続く《ディヴェルティメント》は、ずっと「挑戦したい」とおっしゃっていた曲ですね。

 そう、第1回のトッパンホールアンサンブルのときからずっと言ってきた(笑)。
 この曲はモーツァルト晩年の曲で、ところどころに明るさだけではない陰影が感じられ、大好きな曲です。あくまでもトリオであって、クァルテットではないことに面白さと難しさがある作品だよね。ハイフェッツが中心になったトリオの音源が印象的でよく聴いたけど、今回は自分なりに何を持ってこれるか、あえて聴き返すことはせずに挑みたいね。とはいえ、難しい曲なので、今からちょっと緊張してるんだけど(笑)。

チェロの古川さん、ヴィオラの柳瀬さんとは、前回のアンサンブル以来の共演です。

 そうだね。前回は、まるで長年弾いてきたかのように充実したアンサンブルができたと誇りに思っているけれど、自分自身の音に関していえば、理想とする音を出し切れていなかった面もある。二人ともすごく親切にしてくれて、現場ではいろいろなアイデアを出しあえたけれども、今になって、「彼らは本当はこう弾きたかったんじゃないかな」と振り返ったりもするんです。彼らのアイデアを、すべては実現できなかった。それだけに今回のアンサンブルでは、前回にもまして親密でクリエイティブな関係を築きながら、もっともっと良い演奏をしたいですね。

プログラムの最後を飾るシューマンの《ピアノ五重奏曲》は、忘れがたい思い出のある曲だとか。

 実は、この10年で100回くらい弾いてるんですよ(笑)。というのも、ニューヨークを拠点に活動するマーク・モリス・モダンダンス・グループの『V(ヴィー)』という作品でこの曲が使われていて、僕らが生演奏で伴奏していたから。
 彼らダンサーは、生演奏ならではのライヴ感も大切にしながら、テンポには非常に厳しいんですね。毎回同じじゃないとやはり踊りにくいためか、音楽家よりもセンシティブでした。とても素晴らしい作品だったし、マーク・モリスが求めるテンポ感についても、考え抜いてそこに到達した感じでまったく文句はなかったんだけれども、やっぱり、自分らしさを出し切れていないというフラストレーションはあった。それだけに今回は、伴奏ゆえの束縛から自由になって、独自のテンポ感を試してみようかな、というのはあります。
 たとえば、第2楽章は葬送行進曲なんだけれども、AとBの二つの主題があって、楽譜の指定通りに演奏するとBが遅くなり過ぎてしまう。といって、Bを速くしてしまうと、今度はAから「葬送」らしいキャラクターが失われてしまうんですね。ここは誰もが悩むところで、結果的にはみんなテンポを変えて演奏するんだけれども、そのさじ加減に、個性が出るんじゃないかな。

ピアノとの音のバランスも難しい曲ですね。

 確かに、シューマン自身がピアノの名手で、この作品もピアノの音が厚く書かれているけれども、たとえばブラームスのピアノ五重奏曲と比べると、弦とピアノの関係に、より注意が払われているような印象がありますね。ときにピアノが鳴りすぎるから、ピアニストに遠慮を求めるような声も聞くけれど、本来は僕たち弦の側ががんばるべきなのであって、ピアノの河村さんには思い切り演奏して欲しいと期待しています。

トッパンホールへの久々の登場、お客さまも我々も、とても期待しています。

 何度も言うようだけど、僕自身がとにかく楽しみなんですよ(笑)。まるで実家に帰ってきたような、ファミリー感覚で演奏できるので、すごくリラックスしてコンサートに臨めるんだよね。加えて、トッパンホールアンサンブルの良いところは、長時間ホールでリハーサルできるところ。普通は本番の日しかホールで弾くチャンスはなくて、昔はそれで何も気にならなかったんだけど、最近は、リハーサルの中で試行錯誤できるありがたみが分かってきた。たとえば、アミーチ・クァルテットの公演でも、チェロの原田禎夫さんは結構うるさいことを言う(笑)。より良い音の響きが得られる位置を求めて、ゲネプロ中に演奏場所を変えたりするのが、それこそ昔は「どこでも同じだよ」と思っていたところもあったんだけど、今では「やっぱり違うな」と(笑)。こだわればこだわるほど、良いプレイにつながるんですね。
 新年早々、長時間のリハーサルをしっかりとさせていただいてから、リハーサルと同じ環境でみなさんに披露できるということは、本当に素晴らしいと思います。《ディヴェルティメント》だけちょっと緊張してるんだけど(笑)、久しぶりのトッパンホールでの室内楽を、今から心待ちにしています。

〈トッパンホール ニューイヤーコンサート 2010〉トッパンホール アンサンブル Vol.7

2010/1/8(金) 19:00

川崎洋介(ヴァイオリン)/西野ゆか(ヴァイオリン)/柳瀬省太(ヴィオラ)/古川展生(チェロ)/神田寛明(フルート)/池田昭子(オーボエ)/望月哲也(テノール)/河村尚子(ピアノ)

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