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インタビューInterview

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音楽の中に息づく言葉の響きを感じて、
肩肘張らずに演奏を楽しみたい——
 

白井 圭 Kei Shirai

聞き手=
トッパンホール

トッパンホールが最も期待している若手ヴァイオリニストの一人、白井圭は2007年ウィーンに留学、昨09年にはミュンヘン国際音楽コンクールで2位入賞を果たした。大向こうを唸らせるタイプではないが、じっくりと耳を傾けた人に、とびきりの心あたたまる深い音楽を聴かせてくれる貴重な演奏家。白井圭はこの10月のリサイタルでさらに多くの人の心を掴むことだろう。リサイタルを前にウィーンにいる白井を訪ね、日々の生活、音楽、リサイタルへの抱負などを聞いた。


 ウィーンに来て最初の1年は演奏会やオペラにたくさん通って、連日連夜聴きまくりました。とりわけ印象的なのはオペラ座で2ユーロ、3ユーロで立見したホセ・クーラ、グルベローヴァ、ヴィラソンかな。オケや室内楽、有名なアーティストのソロもいろいろ聴いて、そういう中から本当に良いところをいろいろ吸収したり、自分だったらこうはしないなとかって改めて考えたり、そんな風に勉強できたことがとても有益だったと思います。あと山に行ったり、ブドウ畑に行ったりしてベートーヴェンやシューベルトなんかが同じ風景を見てたのかなって思うと、いろいろ新しいことが発見できたり、感じられたりするんですね。それにこちらのお酒を飲む文化っていうか、ホイリゲのあの雰囲気とかも、やっぱりなんかとても音楽的で、名作曲家の創造の源泉に触れる感じがしませんか。おかげでお酒も飲めるようになったし(笑)。

学校や師のレッスンを受けることだけに意味があるのではない、ヨーロッパに留学する意味の本質を知っているとしか思えない話がさらに続く。私がいつも気にしている「言葉」と「音楽」との密接な関係についても訊ねる前に話し出した。

 ウィーンに来てから半年位はとても閉鎖的な感じがしました。町で話されている言葉も聞き取りにくいし。ドイツ語の響きは日本にいると「硬い」って言われるけど、ウィーンのドイツ語は何言ってるかわからないくらいグシャグシャ。でもそんな言葉の響きが、ここで作られたり鳴っている音楽に繋がっている。ブラームスもハンブルクからやってきて「ヴィーナリッシュ(ウィーン風)じゃなくちゃダメだよ」みたいなことを言っている位だから、きっといろんな作曲家の音楽の中にもこの雰囲気が影を落としてると思うんですよね。それはとても面白い。だから今回のリサイタルでは、プログラムの前半をウィーンにゆかりの深い作曲家の作品でまとめようと思いました。

共演者の選定は意外な人選だった。アヴォ・クユムジャンは非常に強い個性と音を持った室内楽の名手。柔らかい感性の白井はどこに惹かれたのだろうか?

 アヴォと一緒に弾きたいって思ったのは、単純にいつ聴いても「アヴォの演奏は凄い」って思っていたから。室内楽科の教授であるアヴォの門下生のレッスンで、たまに一緒に弾いたりすると、「上手い人と弾くとこんな風になるんだ、こんなことができるんだ」って思える。性格がすごく強い人なので、コンサートで一緒に弾くとなるとどうなるかわからないけど。ただもともと僕は、自分がずっと前で弾いていて後ろで伴奏っぽく弾かれるよりも、自分に伴奏のパッセージが回ってきた時には、ちゃんと相手が主張してくれるっていうタイプが好きなのでその辺は問題ないと思う。

 プログラムについては、前半はウィーンの音楽をやろうというのに賛成してくれて、後半は珍しい曲をやろうということで一致。いろいろ二人で探しまわりました。ヴィエルヌのソナタは、フランク同様イザイのために書いた曲でかなりヴィルトゥオーゾ的。ピアノの聴かせどころも多い。ファリャはずっと楽譜を持っていて弾きたかった曲。もともとスペインの音楽は民族音楽とかポップスみたいなものも好きで、以前ユーゲントオケのツアーで一緒だったスペイン出身のヴァイオリニストがこの曲を歌っていて、それがとても魅力的で魅せられちゃった。ついに今回弾きます(笑)。前半はヴァイオリンの名曲、後半はお客さまにとっても華やかで楽しめる曲、と趣向を凝らし、肩肘張らずにアヴォとみなさまと音楽を楽しみたいです。

〈ARDミュンヘン国際音楽コンクール入賞記念〉白井 圭(ヴァイオリン)

2010/10/9(土) 15:00

アヴォ・クユムジャン(ピアノ)

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