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インタビューInterview

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ベートーヴェンの遊び心を感じる、
崇高で深遠な《変奏曲》の世界へ
 

岡田博美 Hiromi Okada

聞き手=
トッパンホール

 前回トッパンホールで弾いたのは2008年、ホールから提案を受けた《ゴルトベルク変奏曲》にウェーベルンの《変奏曲》を組み合わせたプログラムでした。ゴルトベルクという大曲の前で、存在感が出すぎず、でもただの前座にも終わらない曲はと色々考えていた時に、学生時代にチラシで見かけたピーター・ゼルキンのプログラムを“面白い!”と思った記憶が甦り、正統で王道をゆくバッハの変奏曲と、必要最小限の音で最大限のことを言おうとしたウェーベルンという作曲家の変奏曲の対比なら、興味深く聴いていただけるのではないかと考えました。自分でもよい手ごたえを得られた演奏会だったと思います。
 その演奏会が終演した後、すぐにホールから“次は《ディアベリ変奏曲》をメインとしたプログラムで”と、新たに提案を受けました。

 ベートーヴェンは、ソナタでは初期の頃から素晴らしい作品を次々と生みだす一方で、変奏曲として独立した作品には作品番号を付けていないものが大部分。彼自身、出来に満足できず、変奏曲というスタイルのなかで色々実験を試みながら模索を続けていたのだと思います。でも客観的に見て、ソナタのなかに入っている変奏曲は文句なく、どれも完成度が高いものばかり。そういう最後に、今回演奏するディアベリが生まれたわけなんですね。この作品でベートーヴェンが表現したかったこと——ひとつには崇高で深遠な世界というものがあると思いますが、同時に主題(※)を弄ぶような、皮肉るような、そういった遊びの部分もあったと思います。ですので、ただ深刻に厳粛に崇高にということではなく、ベートーヴェンの遊び心も感じとりながら演奏することで、この作品の真の素晴らしさをお伝えできるのではないかと、そんな風に考えています。

 今回、そんなディアベリと組み合わせたのは、Op.26とOp.109という、いずれも“変奏”が重要な要素になっている2つのソナタです。オーソドックスなソナタ形式の作品を並べて、ディアベリとコントラストをつける可能性も考えましたが、今回も敢えてテーマは変奏で統一し、そのなかで、構造の違うそれぞれのソナタを組み合わせてみました。そもそも変奏というのは、主題があまり豊か過ぎると行き詰ってしまいます。主題が単純であればあるほど変化させやすいですから、仮に、Op.26の第1楽章が独立した変奏曲だと、主題が豊か過ぎて後を続けるのが困難かもしれないと思いますが、ソナタの1楽章として見れば理想的な形ではないかと。同じ変奏曲でもOp.26のように最初の楽章に置く場合と、Op.109のように最後の楽章に置く場合、その違いを2つのソナタで聴き比べていただくのも、面白いと思っています。

 前回の演奏会で、トッパンホールは大きすぎず小さすぎず、とても弾きやすい空間という印象を持ちました。曲にも合っていましたしね。今回もその良い記憶を持って臨みたいと思っています。 ベートーヴェン特にディアベリという作品は、難解だとか、長大で退屈だと思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、前回同様、トッパンホールの親密な空間で堅苦しくなく、楽しんで聴いていただけたら嬉しいです。

主題は、作曲家で出版業者だったアントニオ・ディアベリによりつくられ、ベートーヴェンはじめ50人以上に及ぶオーストリアの作曲家に競作を依頼した。ベートーヴェンはくだらない曲だと乗り気がせず、しばらく放置し、後に単独作品として作曲に取り組んだ。

岡田博美(ピアノ)×ディアベリ変奏曲

2011/4/21(木) 19:00

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