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インタビューInterview

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〈清水和音 ブラームス・プロジェクト 4〉最終回
共演者が語る、清水和音の素顔と魅力
 

鈴木康浩 Yasuhiro Suzuki

松田理奈 Lina Matsuda

上森祥平 Shohei Uwamori

聞き手=
トッパンホール

ブラームス晩年のピアノ作品と室内楽の名作を丹念に綴ってきたブラームス・プロジェクトもついに最終回を迎えます。7月の公演を前に、清水和音と日頃から親交がある3人の共演者に、彼の知られざる素顔やブラームス作品について、そして公演への意気込みを語っていただきました。


鈴木: 和音さんと出会ったのは秋吉台の音楽祭で、10年前だったかな。松田さんもそうだよね。

松田: そう、高1でした。

鈴木: 夜中の12時くらいまでみんな練習しているような音楽祭だったんですけど、そのあといつも、大勢で集まってしゃべっていたんです。平均睡眠時間が2時間かというくらい毎晩。大抵が和音さんの独壇場で、いつも夜通し一緒に騒いでたなぁ。いまや“弟子”と紹介される間柄です、楽器が違うのに(笑)。

松田: 私はいちばん年下で、和音さんは超有名人だし、当時はなかなか輪に入れませんでした。

鈴木: ぼくはすごい人なのを全然知らなかった。だから、なんて話の面白い人なんだろうというのが第一印象だったんですけど、いざピアノを弾いてるのを聴いたら、あまりにも上手くてビックリした。

上森: ぼくはベルリン留学時代に、北九州でご一緒したのが最初だったかな。

松田: 和音さんの懐の深さは素晴らしいですよね。ソリストとして確固たる世界をお持ちの一方、室内楽のときは、オープンに対話ができる。

鈴木: あれだけ室内楽が素晴らしいソリストは、珍しいんじゃないかな。非常に協調性に富んでいて、バランス感覚にも秀でている。普段も、みんなとしゃべりながらズバズバした物言いをするなかでも、かなり周囲に気を配っている方ですよね。

松田: そういうのが、室内楽のときに出るのかな。

鈴木: 一緒に演奏していて、本当に弾きやすい。テンポ感も音楽の流れのつくりかたも、こちらは何も逆らわずにのっかっていけば間違いない、というか。

松田: デュオでご一緒したときは、「ヴァイオリンはメロディーしか知らない楽器だから、オレは奴隷のように従うだけだ」って(笑)。本当にそうだったし、前へ出て引っ張ってもくださって。安心して弾けました。

鈴木: 作品をすみずみまで理解している方だから、音楽の根底に安定感と説得力があるんですよね。とにかくアンサンブルをよく聴いているし、強弱や音色のコントロールが絶妙。ピアノだけがうっかり大きな音で目立っちゃうなんていうことは絶対にないし。

上森: それが何の不自然さもなく、わずらわしさもなく、スッとそこにあるんですよね。実に真っ当というか。それが何というか、パーソナリティーと

鈴木: そう! パーソナリティーとかけ離れてるのは、なぜなのか(笑)。

上森: 解せない(笑)。

鈴木: 音楽では、最も難しい“シンプル”なつくりがサラリとできるのに、しゃべりは延々とまわりくどかったりね(笑)。まぁでも、「パーソナリティーと音楽的感性はかけ離れたものである」というのが持論みたいだから、きっとそれ、和音さん自身のことなんだな。

鈴木: 和音さんは作曲家に対するビジョンもはっきりしているなと思います。しかも、ドイツものから、フランス、ロシアと本当に幅広い。ピアノは、弦楽器よりもトーンというかニュアンスを変えづらい楽器だと思うのですが、それぞれの作曲家、作品に合う音の引き出しをたくさん持っている。「音」へのこだわりが強い方ですね。

松田: 本当に「音」が好きですよね。その人しか出せない音はコレだ、みたいなことも明確に言える。

鈴木: そして基本的に、音程が悪いのは大嫌い(笑)。

松田: 美しいモノが好きなのね。

上森: 海外の若いアーティストのことも、よくご存じだし。

鈴木: 新しいモノも好き。

松田: おいしいモノも大好き。

鈴木: あと、最先端の技術ね。カメラとかオーディオとかアンテナが広いよね。たぶん、ご本人の中で常に進化しているところがあるんだと思います。第一線で演奏活動を続ける演奏家の中には、若くて勢いのあった時期から意外と変化できずにいる人も多い。でも和音さんは、「20年前に流行ったモーツァルトしか弾けません」というようなところは全然なくて、ちゃんと“今”のモーツァルトが弾ける演奏家。弦楽器でいえば、特にボウイングやヴィブラートのニュアンスなんかは、どんどん変わっていくので敏感にならざるを得ないんですけど、例えばそういうことも含めて、和音さんは演奏家としてのスタイルがいつも新鮮ですね。

上森: 今回のブラームス・プロジェクトは、錚々たる顔ぶれが並ぶ最後、和音さんが、締めくくりはぜひぼくらと、って言ってくださったようです。

松田: ブラームス、大好きです。留学してから、もっと言うと室内楽をやるようになってから、すごく好きになりました。

鈴木: ぼくは、ブラームスは最初に好きになった作曲家かもしれない。室内楽はほとんど弾いてます。

上森: ブラームスの室内楽作品て、デュオより編成の大きいほうが面白い気がしない?

鈴木: うん。ピアノ四重奏や五重奏のほうが、圧倒的によくできてる曲だなって思う。シンフォニーの第1番もそうだけど、若い時に書かれたものは、どれもいい曲という気がします。よく言われる話ですけど、ブラームスは内声の魅力が本当にたまらない。書き方が実に独特で、メロディーラインはナヨナヨしてるんだけど

上森: そう! その一方で、内声やバスが葛藤してるんですよね。そのコントラストみたいなところに独特の情感や厚み、奥行きが生まれる。だから編成が大きいほうが面白いのかもね。

鈴木: ヴィオラは、内声でさまざまにバランスをとりながら、“中を充実させる”のが基本の仕事。主にヴァイオリンがどういう色かによってバランスの取り方が変わるので、今回のプロジェクトの締めくくりになる五重奏、松田さんとは初めて弾くので楽しみです。

上森: ぼくとは最近、よく一緒に室内楽をやっているけどね。

鈴木: 2人ならどうとでも動けるでしょ(笑)。2ndの林くんは、こちらからの推薦で和音さんとは初共演だね。とても頭のいい演奏をする人で、テクニックも確かな上にエモーショナル。いつもは1stで、2ndはほとんど弾いていないと思うので、林くん自身も楽しみにしているんじゃないかな。

上森: ブラームスって実は、イメージほど昔の作曲家じゃなくて、先生のおじいさんくらいの世代だったりするんですよね。連綿と続く音楽史の本流に連なる作曲家でもあるし、現代側からの視点を持ち込めば、またちょっと違う、新しい景色が見えてくる面白さもあると思います。シリーズの最後に若手といわれるメンバーを揃えて締めくくる点、なんか“和音さんわかってるなぁ”という感じがしますね。

松田: 確かに。5人でどんなブラームスに会えるのか、とっても楽しみです!

〈清水和音 ブラームス・プロジェクト 4〉清水和音(ピアノ)、松田理奈(ヴァイオリン)、林 悠介(ヴァイオリン)、鈴木康浩(ヴィオラ)、上森祥平(チェロ)

2011/7/23(土) 18:00

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