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インタビューInterview

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日下紗矢子の写真

表現の翼を自由に拡げ
音楽に没頭できる
ひとときを楽しみたい
トッパンホールプレスVol.126より

日下紗矢子(ヴァイオリン) Sayako Kusaka

聞き手=
西巻正史(トッパンホール プログラミング・ディレクター)
写真=
藤本史昭
取材・文=
トッパンホール

〈日下紗矢子 ヴァイオリンの地平〉最終回以来、5年ぶりの登場となる今回。ヨーロッパと日本を行き来するハードなスケジュールの合間を縫って、〈エスポワール〉シリーズをきっかけに今も共演を重ねるペーター・ブルンズ(チェロ)、再共演を願っていたというフローリアン・ウーリヒ(ピアノ)や今回のプログラムについて、お話しいただきました。


コロナ禍での出演キャンセル3回を経て、ようやくですね。お帰りなさい。

本当に。充実したステージの記憶がたくさんあるトッパンホールで、今回もすごく楽しみにしています。

今回は日下さんの清々しいキャラクターにふさわしく、新年の幕開けをお願いしました。ピアノ・トリオは弾かれることがありますか?

はい。ペーター(・ブルンズ)とはよく共演していますし、フローリアン(・ウーリヒ)とも一度メンデルスゾーンを弾いています。

日下さんなのでチェロは当然のようにブルンズ。おふたりならと、曲はブラームスとメンデルスゾーンをご提案しました。

ブラームスの1番はチェロではじまる曲ですが、出だしのペーターの音を聴くたびに「あぁ、最高!」と思います。彼と共演するのはいつもとても幸せで、トッパンホールでこの曲をペーターと弾けるのはものすごく嬉しい。メンデルスゾーンも〈エスポワール〉のときに一緒に演奏していますし、今度はピアノがフローリアンなのがまた楽しみです。

日下紗矢子の写真2

ウーリヒは、日下さんのご推薦です。

どんなピアニストか知らずに、去年初めて共演した方です。その時の曲目が今回のメンデルスゾーンで、ソナタもご一緒したのですがとっても素晴らしくて、またぜひにと願っていました。そうしたらペーターも共演歴があって、彼をよく知っていましたね。
フローリアンは何でも弾けてしまうすごいピアニストで、去年の共演ではデュプレクス(二段鍵盤ピアノ)を弾いたんですよ。鍵盤が非常に重たくてとても珍しい楽器です。
リハーサルの時は普通のピアノで弾いていたのに、本番はデュプレクスで、こともなげに。高度なテクニックを持っているからこそ、音楽がごく自然に響くのでしょうね。とても繊細な感性の持ち主で、相手がどう弾きたいかを受け取る感覚も非常に鋭い。音楽のないところに音楽をつくれるような、ちょっと魔法のような面白さを持つピアニストです。

彼にはソロで《子供の情景》を弾いてもらいます。ブラームスとメンデルスゾーンを繋ぐ意味もありますが、シューマンらしさを出しながら、すごく自然な音楽を聴かせてくれそうです。ブルンズさんとのトリオも、実に楽しみです。

ペーターもとても自然な音楽を奏でる人ですし、的確に相手の呼吸を受けとめますから、相性は抜群だと思います。私はペーターと弾いていると、とても心がトキメキます。彼の音楽はすごくポジティブなので、息を合わせていると私も前向きになって気持ちが高揚してくる。そのうえ、自分を伸び伸び表現できる。そういう音楽家、共演者にはなかなかめぐり会えません。いま、少し先まで一緒の演奏会が決まっていて、もう、それだけで幸せなほどです。

日下さんにとって、特別な存在ですね。

彼はたぶんですけれど、自分に似たところがあるのかなと思います。表現することにとても自由に向き合っている。すごく物知りで、バロックスタイルも追求すれば、モダンにも詳しいし、多くの研究に裏付けられた知識に基づいて、自身の自由な表現、可能性をぐんぐん拓いていく音楽家です。そういう点にとても共感します。

そのおふたりで、今回はシュルホフも弾いていただきます。

シュルホフは、〈エスポワール〉のときに毎回プログラムに入れて以降、弾き続けている作曲家です。そしてそれ以来、ペーターとしか弾いていないのでは、というほど彼と一緒に演奏しているんですよね。ペーターとは2011年に〈エスポワール〉で共演したのが初めてですから、12年まだそんなでしたっけ。

日下紗矢子の写真32011年7月2日「日下紗矢子〈エスポワール〉Vol.2」公演より(©大窪道治)

ずっと、音楽の相棒という感じですよね。

私はそう思っていますが、彼はどうでしょう(笑)。でもブラームスの1番の出だしは本当、次のヴァイオリンは聴かなくてもいいというくらい、いちばんの聴かせどころは、チェロではじまる冒頭、最初のフレーズなんです。本当に素晴らしい曲ですが、何より、ペーターの弾くあの冒頭を聴いていただきたいです!

メンデルスゾーンはいかがでしょう。

メンデルスゾーンについては最近、メンデルスゾーンのトリオやヴァイオリン・ソナタが、いかにユダヤの昔の歌と結びついているかを確かめるプロジェクトというのに、ペーターと参加しました。よく知られるようにメンデルスゾーンはユダヤの家系で、子どもの頃におばあさんから、ユダヤの歌をたくさん聴かされていたらしいのです。そのメロディーが彼の音楽のなかでいかに活かされ、さらに今日に至るまでどう発展しているのか、演奏会を通してユダヤの歌手と共演しながらそれを探る、という企画だったのですが、その経験を通していろいろな気づきがあり、新しい目を開かされました。

日下さんはもともと、メンデルスゾーンがお好きですよね。彼の音楽には清々しさを感じますが、それがまた日下さんの清々しい印象と結びついている気がします。
音楽と真摯に、生き生きと向き合うお三方が集まって、それぞれの解釈をキャッチボールしながら、どの曲からも新年にふさわしい、清新な響きが生まれそうです。ピアノ・トリオは、時代に合った解釈や自由度の点で、ほかの室内楽の編成よりもトライできるレンジが広いとも思います。思い切り楽しんで、今回もまた、トッパンホールで新しい表現を拓いてください。

(2023年7月取材)

トッパンホール ニューイヤーコンサート 2024

2024/1/21(日) 15:00

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