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インタビューInterview

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岡本侑也の写真©大窪道治

真新しいプログラムで臨む、渾身の無伴奏 トッパンホールプレスVol.127より

岡本侑也(チェロ) Yuya Okamoto

取材・文=
トッパンホール

2023年は濃密な一年でした。年初にはサプライズ出演で、〈トッパンホール ニューイヤーコンサート〉で師匠のユリアン・シュテッケルさんとパガニーニを弾かせていただいて。彼も共演を喜んでくれたし、何よりとても楽しかったです! 師匠との共演はいつでも特別なものですが、それがトッパンのステージでだなんて嬉しくていまでもユリアンと会うと、この時の話になります。そのほか、クリスティアン・ツィメルマンさんとのヨーロッパ・ツアーや武生国際音楽祭、エベーヌ弦楽四重奏団のツアーにも参加させていただきました。エベーヌQとはこのあと12月頭に、イギリス、ドイツ、フランスを4日間連続で巡るツアーが控えています。すべて電車移動なので、体力が持つかみんな心配しています(笑)。

*    *    *

トッパンホールさんは、僕がやりたいと思うことを広い心で受け止めてくださるので、今回も妥協せず、自分にとって特別な領域である無伴奏で組んでみました。前回(2021年2月)は全体に賑やかな明るい様相の、チェロの定番と言われるような作品を並べましたが、今回は対照的に、静けさのなかで物語が展開していくような、音のない時間もキーポイントになる作品を集めています。誰とも被らないオリジナル・プログラムをつくりたいと、過去のトッパンホールのチェロ公演を調べたりもして結果それができて嬉しい反面、今回も相当難しいものを選んでしまった、と思っています(笑)。

あとは、日本人作曲家を入れたくて、2作品をそれぞれ、前後半の真ん中に配置しました。尾高惇忠《瞑想》は、その名のとおり座禅など仏教的な雰囲気を感じさせ、自分自身と向き合う葛藤のようなものが描かれています。一方で、ドラマティックに展開していく場面もある作品です。細川俊夫の曲は、琵琶や尺八、習字の筆遣いのイメージが盛り込まれていて、同国人として共感しやすい部分が多いと感じます。

ユン・イサン《グリッセ》は、韓国の伝統楽器がモチーフになっています。音の移り変わりに焦点を置いたとても面白い作品で、伝統楽器を表現するという意味では、以前弾いた黛敏郎《BUNRAKU》に共通するところがあります。調べていて知ったのですが、韓国の伝統奏法にはグリッサンドの種類が20種以上あるそうで、そんなに豊富な表現方法があるのかとすごく驚きました。

日本・アジアの伝統的な文化や物が結びついている3曲に対置するかたちで、ペンデレツキとブリテンを――ペンデレツキの無調性から始まって、調性のあるブリテンに向かっていき、また無調性(ペンデレツキ)に戻ってくるという流れも面白いのではないかと思い、この順番にしました。

最後のペンデレツキは、ダークな静けさのなかに強烈な和音が連続していて、緊迫感やおどろおどろしい感じが強く出ている作品。でも一方で、教会の祈りのような静けさもあります。そのコントラストと、とてつもない超絶技巧が聴きどころです。前回の藤倉大《osm》とは異なる超絶技巧がいっぱい出てきて新たな発見が絶えません。最初のカプリッチョは視覚的にも楽しめるので、お客さまはかなり面白いと思います。楽器を叩いたり、駒とアジャスターの間を弾いたり、楽器を壊すのではと心配されるほど、インパクト大です(笑)。

ペンデレツキとブリテンの組曲は、実は今回が初挑戦。ブリテンは、プログラムのなかではもっとも知られた曲であり、調性感の点からも、流れにぐっとコントラストをつけてくれると思います。J.S.バッハを意識しながら、いろいろな要素を大きな流れに繋げていく世界観はブリテン独特のウィットに富んでいてユニークです。そして、冒頭と呼応するかたちで最後に置いた、ペンデレツキの組曲。プログラム全体を締める表現も意識して臨みたいと思います。

*    *    *

トッパンホールの残響は僕にとってとても心地よく、演奏しながら思い描く響きとホールの響きがマッチする瞬間は、いつもたまりません。弱音から爆音まで表現の振れ幅があってもホールが瞬時に反応して高いクオリティーで客席に届けてくれますし、安心して攻めの姿勢で臨むことができます。今回の真新しいプログラムも、本番でどんな風にホールが反応してくれるか、お客さまにどう届くのか、いまからすごく楽しみです。

(2023年11月末取材)

岡本侑也(チェロ)―無伴奏 II

2024/3/10(日) 17:00

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