公演情報Concerts
フレンチながら和の心に通ずるものがある、チャーミングで
真摯な、心から尊敬する音楽家でありパーソナリティ。

アントワンとは2005年のヴィオラスペースのマスタークラスで出会いました。彼にとってはじめての公開レッスン。まだ20代後半でしたが、カリスマ性がぷんぷん漂っていました。そのとき、シュニトケのコンチェルトでヴィオラの首席をさせていただき、とても勉強になりました。その後ジュネーブでの5年の勉強を経て、彼のもとケルンで2年半研鑽をつみました。
アントワンは楽譜の読み込みがとてつもなく優れていて、彼から学んだ大きなところがここです。いつも、「どうしてそうやって弾いたの?」と質問され、和声やセオリーに基づいた答えができないとダメでした。それまでわりと感覚重視できたぶん、最初の1年はレッスンのたびに冷や汗。勉強不足を痛感し、なかなか辛かったです(笑)。彼の音楽が自然でエレガントなのは、彼の分析力、そこから発生する音楽表現の確信性、革新性、そして人間性のすばらしさが交わっているからだと思います。
私に対しては、もちろん先生なのですが、大人の付き合いみたいなものを目指してくださっていたように思います。時々、彼自身が準備している曲を私に弾いて、「どう思う? どっちの指づかい、ボーイングがいいかな?」と、信頼して意見をきいてくる、とてもオープンな方です。
キャラクターとしては、まがったことは大嫌い、常に正当派で、家族思い。細かいところにもよく気がつき、他人への尊敬をおしまない、そんなところに和の心を感じていました。そして人間のスケールが大きい、とても思いやりのある方です。それはどんな分野でも一流の人に通ずる、人間力みたいなものでしょうか。クラスは小さいながらもみんなでよく集まり、弾き合いをしたり、誰かの家で半年に一度はアントワンもまじえてヴィオラパーティー。持ち寄りで和気あいあいと、彼が最新のヴィオラジョークをお披露目してくれたり、クラスはアットホームないい雰囲気でした。今でもケルンで演奏会があると必ず連絡をくださいますし(もうそこに住んでいないにも関わらず、笑)、4、5ヶ月に一度は長いメールで近況報告をしあっています。
Mariko Hara
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