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インタビューInterview

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ハーゲン・クァルテットとして初めてのツィクルス挑戦。
メンバー全員、とても楽しみにしています。
 

ハーゲン・クァルテット Hagen Quartett

聞き手=
西巻正史

トッパンホールの歩みのなかで、大切な節目のステージに必ず登場してくれているハーゲン・クァルテット。2010年結成30周年を迎えた彼らによって、ついにビッグ・プロジェクトが始動する。それがベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲演奏会。演奏会を前に、クレメンス・ハーゲンとライナー・シュミットに話を聞いた。


いよいよベートーヴェン全曲が実現することになって、とても感慨深く興奮しています。思い返せば2001年の春、コンツェルトハウスでの演奏を聴かせていただいたあとに、後期を弾いてもらえないかとお願いしたのが最初でしたね。

クレメンス・ハーゲン(以下C): そうでしたね。

日本の関係者の方たちには集客が厳しいよ、と指摘されましたけれども(笑)。でも2005年に実現した時、チケットは発売1週間と経たずに2日分売り切れて、“してやったり!”でした。

ライナー・シュミット(以下R): トッパンホールでの公演は、いつもお客さまがいっぱいですよね。感謝しています。

ハーゲンQには今まで何度も出ていただいていますが、常に大きな反響があります。お客さまの聴き方も、クァルテットを厳格で神聖なものとしてじっと聴く、というところから、音楽そのもののダイナミズムを演奏家とともに楽しむというように変化してきた印象がある。ご一緒してきた10年の間に、東京の、日本の音楽シーンにトッパンホールとして、みなさんと何か新しい風を吹かせることができたかな、という思いがあります。

R: トッパンホールのお客さまは、常に集中して注意深く聴いてくださいますね。ホールが、室内楽に大変理想的な空間で大きさもちょうどよく、舞台から客席がよく見渡せてお客さまの反応を肌で感じることができる。本当に室内楽を聴くために足を運んでくださっている方たちなのがわかります。日本には素晴らしいホールが数多くありますが、なかでも、トッパンホールは何度訪れても心から幸せが感じられます。今回、これまでの積み重ねの結実として、この全曲プロジェクトをここで演奏できることは、メンバー全員にとっても大きな喜びです。

C: トッパンホールは音を出した瞬間、それが会場のすみずみまで届いていく実感が得られる稀有なホールです。魂をこめた音が、音響面でも、お客さまの集中力という点においても、どこにもひっかかることなく会場中に伝わっていく感覚は容易に得られるものではありません。これはトッパンホールの唯一無二の個性だと思います。

私たちがコラボレートをはじめてからの10年間は、みなさんが、クァルテット界のトップランナー、第一人者へと大きな進化を遂げた、重要な10年だったと思います。

C: 実は、自分たちが今音楽界でどういうポジションにいるのかを意識することは全然ありません。演奏会の機会をコンスタントにいただけていて、非常に恵まれた状況なのは充分認識していますが、日々のなかでは、評価やポジションという意識とはむしろ離れたところで、ただまっすぐに音楽と向き合っているだけです。私たちは作曲家が創った音楽を演奏することで毎日を送っていますが、素晴らしい作品は数え切れないほど存在し、一生かかってもそのすべてを堪能し尽くすことはまず不可能でしょう。だからリハーサルの時でも毎回、一分一秒を惜しんでただ純粋に音楽のことを考える。自分たちが何者かなんて考えている時間はないんです。

予想通りのお答えです。では、ベートーヴェン全曲を今のタイミングでお引き受けくださった理由を教えていただけますか?

R: 不思議に思われるかもしれませんが、実は長い間、そうした全曲ツィクルスをやりたいとメンバーの誰も言い出さなかったんです。ある作品集をツィクルスで取り上げるということを避けて、常にミックスのプログラムにしてきた。それがやっとこの数年、やってみたいなという想いが芽生えてきて、葛藤も繰り返しながら少しずつ形になってきた。やってみようかと皆の考えが固まったのがやっとここのところ、という感じなんです。そして集中して取り組むなら、多分ベートーヴェン以外はないだろうと。生涯を通じてこれほど多彩な世界を創り出した作曲家という点で、この人の右に出る者はないのではないかと思います。ベートーヴェンだからこそ、作品を通じて、人としての成長、人生の素晴らしさ、喜び、苦しみ、人間としてのさまざまな旅を凝縮して体感できる、今回はそんなツィクルスになると思います。ハーゲン・クァルテットとして初めて一人の作曲家に焦点を当てた挑戦をするわけですから、全員がそれはそれは楽しみにしています。

ハーゲン・クァルテットは、古いものに非常に敬意をはらいながら、同時に現代の息吹や生命力を強く感じさせてくれるクァルテットだと思います。

C: 嬉しい指摘です! 学生にはいつも「200年前の音楽を演奏する意味がお客さまにわかるように弾きなさい」と言っているんですよ。200年前の音楽というだけなら特別面白いものではないかもしれない。でも長大な時間を経てなお輝き続ける作品が存在し、私たちはそれに価値を感じ、弾いて喜びを得ます。作品の背景、歴史的な面を徹底的に学んだうえで、今を生きる私たちが、作曲当時とは環境も感性も異なる今のお客さまへいかにそれを伝えるのか、演奏する者は十全に考えなくてはいけません。演奏からその想いを感じていただけて本当に嬉しい。それこそまさに私たちが達成したいことです。

R: 私は「音楽=コミュニケーション」だと思っています。譜面そのものが作曲家によるコミュニケーション行為で、私たち演奏家がそれを音に置き換えることで、コミュニケーションは3倍にも4倍にも深まります。表現されたものをどう受け止めるのかはもちろん人それぞれで、コミュニケーションもいろいろなあり方があっていい。トッパンホールでも毎回、そういったお客さまとのコミュニケーションを楽しんでいます。

C: 今回、何が待ち受けているかまったく予想できない未知の世界ですが、私たちにとって間違いなく素晴らしい、大きな体験になることは約束されていると思います。

お客さまと、非常に楽しみに開幕を待っています。

ハーゲン・クァルテット ベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲演奏会 前編

第1夜

2013/2/26(火) 19:00

第2夜

2013/2/27日(水) 19:00

第3夜

2013/3/1(金) 19:00

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