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インタビューInterview

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ニルス・メンケマイヤーの写真

音楽でつながる特別なひととき トッパンホールプレスVol.115より

ニルス・メンケマイヤー(ヴィオラ) Nils Mönkemeyer

取材・文=
トッパンホール

2018年の初登場以来、ディープな企画で唯一無二の音楽性を示してきたニルス・メンケマイヤー。20年の〈モーツァルト・プロジェクト〉は、コロナ禍で2度に亘る中止を余儀なくされましたが、このたびトッパンホールのためだけに来日、無伴奏リサイタルを開催します。飽くなき探究心と情熱、そして聴き手への深い愛が詰まったプログラムは、私たちを未知の音楽体験へと誘い、人柄そのままの温かい音楽で、やさしく包み込んでくれるに違いありません。今回、主に初演作品について、メール・インタビューしました。


まず、カール・ウアハーネという作曲家について教えてください。

ある日コンサートの後、一人の男性が私に近づいて来て、特に説明なく封筒を渡してきました。不思議に思いながらも開けてみると、「カール・ウアハーネ」という無名の作曲家によるヴィオラ・ソロのために書かれた作品がたくさん入っていたのです。1920年代に生まれたウアハーネは、ベルリンの音楽大学でヴィオラと作曲を学んでいましたが、おそらく教授がユダヤ人であったという理由でナチスにより強制収容所に収監されてしまったのです。封筒には、彼が母親に宛てた手紙も入っており、自分の作品を大切に保管してほしいと書かれていました。彼は二度と戻らなかったそうです。

今回演奏する作品はどんな音楽ですか?

少しだけヒンデミットの《無伴奏ヴィオラ・ソナタ》を彷彿とさせます。とても熟練したスタイルと技法で、アイディアと希望に満ちています。この曲をトッパンホールで世界初演できることを、とても嬉しく思います。

イザベル・ムンドリーはごく最近の作品ですね。

ムンドリーに秘められた声は、とてもユニークで、すべての音が力強さと意味を持っています。《無伴奏ヴィオラのためのスケッチ》は2021年夏に作曲されました。2つの短いモチーフが互いに呼応しながら展開されます。ムンドリーは、私たちは異なる〈身ぶり〉を通して、いかに自分を表現するのか、いかに反応したり変化させたりして表現しているのかについて考えていたのです。

コンスタンティア・グルジはどんな作曲家ですか?

グルジはギリシャ出身の作曲家で、何年も私と音楽作りをしています。彼女の音楽からは内なる静寂がダイレクトに表現されたような精神世界と脈打つ内面を感じることができます。《木と木の対話》は、時の流れを表現した持続音と、話したり囁いたりするヴィオラパートで展開されます。“The Secret Language of Trees”という本からインスピレーションを受けていて、グルジと私はその本にとても魅了されたのです。木と木が、それぞれの根と秘密の言語を通じて、支え合い助け合うという、不思議なコミュニケーションの様子を表しています。
グルジ作品の前に弾くビンゲンの音楽は、私にとってとても神秘的で、長年魅了されてきました。彼女は生涯にわたり幻視体験をし、聞こえた音楽を書き留めていました。それは彼女にとって、天使と宇宙の音楽だったのです。グルジ作品と同じく、持続音の上で演奏されることから、私は、何百年も離れた2つの作品を繋げて演奏することで、束の間のタイムトラベルをしたいと思います。

最後に、このプログラムはどのような思いを胸に組み立てたのか教えていただけますか?

昨年、世界中が閉ざされ、私たちは皆、コンサートや映画を通して体験をシェアしたり、食事をともにしたりすることができない状況に置かれました。私は毎日J.S.バッハを弾くことで、前に進む力を得ることができました。バッハの組曲は、あたかも自分自身との会話をしているかのようであり、高みの存在と繋がる経験でもあります。今回演奏する素晴らしい作品を皆さんに聴いていただくことで、プライベートな時間を共有し、様々な時代とスタイルを持った音楽の流れを辿っていただきたいと思います。ほんのひととき、私たちは音楽を通して繋がることができると信じています。

(2021年)

ニルス・メンケマイヤー(ヴィオラ) ―無伴奏

2022/2/11(金・祝) 15:00

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