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インタビューInterview

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ティル・フェルナーの写真©大窪道治

ウィーンから世界へ――
時代もスタイルも違う傑作を一晩で
トッパンホールプレスVol.125より

ティル・フェルナー(ピアノ) Till Fellner

文=
ティル・フェルナー
訳=
フェルナー亜沙子

2007年、トッパンホールでのリサイタルが終演した時、プログラミング・ディレクターの西巻さんに「次のプランは?」と、聞かれたのを覚えています。
2008~2010年にかけて、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全32曲を7回に分けて演奏する計画があると伝えると、当時日本では名前がまだそれほど知られていない私のこの少し大きすぎる話に興味を持ち、音楽事務所KAJIMOTOと共同で全公演を開催することを決めてくださいました。この壮大なプロジェクトを実現するのは、簡単な決断ではなかったはずです。その覚悟をしてくださったことを、今でも、そしてこれからも感謝し忘れることはないでしょう。

ティル・フェルナーの写真2ベートーヴェン ピアノ・ソナタ全曲演奏会/2008~2010年 全7公演(©大窪道治)

ベートーヴェン・ソナタのツィクルスには、特別な芸術的喜びがありました。32曲全てが新しく、異なり、最高級の質を持っているからです。東京だけでなく、ヨーロッパ(ウィーン、ロンドン、パリ)や北米(ニューヨーク、ワシントンDC)でも行ったため、この両年でベートーヴェン・ソナタのリサイタルだけでも100公演以上という、ロジスティックな挑戦にもなりました。
他にもトッパンホールには、私の長年の素晴らしいパートナーであるテノールのマーク・パドモアとのシューベルト三大歌曲集、ベリオやツェンダーの作品を織り交ぜたシューマン プロジェクトを実現していただきました。

ティル・フェルナーの写真3シューベルト三大歌曲/2011年 全3公演(©大窪道治)

今回のプログラムは、全てウィーンで書かれた曲。けれど時代もスタイルも違う4つの傑作を集めました。
私にとって最も美しく、最も感銘深い作品の一つであるシューベルト《即興曲 D935》は、ローベルト・シューマンによるある論文が発表されて以来、事あるごと、執拗なまでに4楽章からなるソナタだと論されてきましたが、私はそれが的確な意見だとは思いません。むしろ独立した4つの作品であると言えるでしょう。ですから、この即興曲の演奏を他の音楽で中断するのは、不自然なことではなく、可能だと考えています。私が選んだのは、シェーンベルク《6つの小さなピアノ曲》。短いミニアチュール、しかし極度な緊張感、そして強い表現力を持ったこの「自由無調性」、調性(長調/短調)ではもうない、それであってまだ十二音技法は使用されずに書かれた音楽です。

ティル・フェルナーの写真4シューマン プロジェクト/2016年 全2公演(©青柳聡)

後半はウィーナー・クラシックで有名な2つの作品。暗く重々しいハ短調のモーツァルト《幻想曲》で始まり、輝かしい光を放つハ長調のベートーヴェン《ワルトシュタイン》で終わる旅になります。《ワルトシュタイン》はピアノ曲に新しい響きの可能性を拓き、そしてプライベート・ルームやサロンで演奏する曲ではもうなくなり、より大きな空間、コンサートホールでの演奏を求めて書かれました。今回のプログラムをこのソナタで終わらせたい理由もそこにあります。
大好きなコンサートホールの一つ、トッパンホールでこのリサイタルができることを心から楽しみにしています!

ティル・フェルナー(ピアノ)

2023/11/24(金) 19:00

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