インタビューInterview

エベーヌ弦楽四重奏団との八重奏で世界をめぐっているベルチャ・クァルテット。アメリカツアーの最中、3/27のプログラムや八重奏について、メール・インタビューしました。WEB版では、トッパンホールプレスVol.133のインタビュー記事に、若いクァルテットへのメッセージを新たに加えてお届けします。
3回目のトッパンホール登場です。ホールの印象やトッパンで弾く面白さなどお聞かせください。
音楽家にとって演奏会場のクォリティはとても重要です。お客さまとアーティストとの間に言葉にはできない絆を育むには、いくつかの基準を満たさなければなりません。まず音響が真っ先に浮かびます。次に客席の静けさ、お客さまの集中力。そしてホールのサイズです。弦楽四重奏はオーケストラではないので、トッパンホールのサイズはお客さまと演奏者との間に、ある種の親密さを生み出してくれます。これらのクォリティすべてを兼ね備えたトッパンホールは、私たちの公演に最適な会場といえるでしょう。
3/27のプログラム(シェーンベルク第1番、ベートーヴェン第14番)の意図、狙いについて、またそれぞれの曲の魅力をご紹介ください。
私たちは今年結成30周年を迎えます。その節目を祝うのに相応しいプログラムだと考えています。ベートーヴェンの第14番は、私たちにとって最も共感できる作品であり、弦楽四重奏のレパートリーの頂点です。ベートーヴェンはこの作品のなかで、おそらく彼のほかのどの弦楽四重奏曲よりもダイレクトに、音楽的表現の核心に迫っています。壮大なスケールのなかに絶え間なく流れるような弧を描き、音楽の流れを守るためにすべての形式的な制約が取り除かれています。その結果、西洋文明のなかで最も完成された音楽の表現のひとつが生まれたのだと思います。
そして、シェーンベルク第1番を選んだのは、この曲がベートーヴェン第14番と組み合わせるのに最適だと信じているからです。この作品の巨大かつ複雑な構成を構築するうえで、シェーンベルクが主にベートーヴェンからインスピレーションを得ていたのは明らかです。この弦楽四重奏曲は調性が使い尽くされ、新しい和声言語に道を譲ろうとしていた転換期である20世紀初頭に書かれました。この曲は、もうひとつの音楽の旅――苦闘と混乱の旅であり、ときには混沌と破壊の瀬戸際にいながら、最終的には超越的な美と平和という解決を“得る”旅です。弾き手にも聴き手にも非常に難しい音楽ですが、解決を手に入れる努力に見合う価値があると、私たちは確信しています。
ベートーヴェンとシェーンベルクは、私たちが何者であるかを教えてくれる存在です。この傷つきやすく弱い人間という存在が、世の中で自分の居場所を探す旅において、とてもいい道標になってくれます。
エベーヌQとは、すでにヨーロッパでツアーをされていますね。ベルチャQとはタイプの異なる団体だと思いますが、なぜ彼らと組んだのか、また実際に共演した感想をお聞かせください。
とてもシンプルな話で、彼らと一緒に演奏するのが本当に楽しいのです。お互いに尊敬と称賛の気持ちを抱いているので、それぞれの違いから学び、それが刺激的な仕事につながっています。例えば、彼らは音に対してかなりフィジカルにアプローチしますが、私たちはフレーズのなかにある生命にこだわります。これは魅力的な交流です! そして、私たちはお互いのことがとても好きなので、ツアーもコンサートもこのうえなく楽しいです。

クァルテットの魅力や面白さなど、弦楽四重奏に取り組む若い演奏家へメッセージをいただけますか。
室内楽は常に素晴らしい経験です。自身の判断と直感を超えてメンバーと分かち合い、合意する点を見つけることが求められます。そのなかで弦楽四重奏というのは、同じ弦楽器族の間で和声の構造が理想的に実現される、特別に充実した形です。作曲家たちは早くからこのことを認識していたので、膨大でとても輝かしいレパートリーが存在していますが、残念なことに、そのすべてに取り組むには人生はあまりにも短いのです。
弦楽四重奏は非常に共生的な関係で、4つのパートからなるパズルのひとつひとつは、互いに依存しながらも、それぞれが明確な声を持っています。4人の頭と心でこれらの微妙な違いを一緒に発見していくことは、とても素晴らしい旅です。
クァルテットは複雑さを伴っています。私たちは誰もが自我、不安、限界、生活の変化、そして文化の違いを持っており、これらの要素は日々変動し、流れを早めたり阻止したりします。ときには困難なこともありますが、これらの波を一緒に乗り越える方法を学ぶチャンスでもあり、非常にやりがいのあることです。若いクァルテットの皆さんには、尊敬し憧れる人がいること、そして彼らと音楽を共有できることは本当に素晴らしい、ということを伝えたいです。最終的にどんな結果になろうと、挑戦する価値があります。お互いからたくさんのことを学び、また一緒に学んでいくことで切磋琢磨できるでしょう!
最後に、今回の公演を心待ちにしている聴衆に向けてメッセージをお願いします。
世界のなかでも特に好きなホールのひとつであるトッパンホールに戻れることを、心から楽しみにしています。私たちは日本のお客さまが大好きですし、私たちの演奏に対する反応に毎回とても感動しています。3月の公演では、大切な友人であり音楽仲間のエベーヌQとともに、忘れがたいひとときになることをお約束します。みなさんに会えるのが、いまから待ち遠しいです!
(2024年11月取材)
ベルチャ・クァルテット
2025/3/27(木) 19:00
ベルチャ・クァルテット×エベーヌ弦楽四重奏団
2025/3/28(金) 19:00
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