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インタビューInterview

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ニコラ・アルトシュテットの写真©Marco Borggreve

常に新しい音楽を追い求めて TOPPAN HALL PRESS Vol.141より

ニコラ・アルトシュテット(チェロ) Nicolas Altstaedt

取材・文=
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2023年2月、鮮烈な無伴奏で聴衆を魅了したアルトシュテットに、今回のプロジェクトについてメール・インタビューしました。WEB版では、TOPPAN HALL PRESS Vol.141のインタビュー記事に、未来の展望を新たに加えてお届けします。


今回共演するイリア・グリンゴルツさんとは、とても仲が良い印象を受けますし、ヨーナス・アホネンさんとはこれまでにも共演経験がありますよね。彼らの魅力についてお聞かせいただけますか?

イリアとは20年以上の付き合いになります。彼はほぼ毎夏、ロッケンハウスでの私の音楽祭に参加してくれていますし、私自身も彼が芸術監督を務める音楽祭に出演してきました。「既成概念にとらわれない」思考を持つヴァイオリニストで、並外れた知性と多彩な表現でコンサートに新しい風を吹き込んでいます。すべての音楽家にとってのロールモデルといえる存在でしょう。私たちは似たようなビジョンや考えを共有しており、日常でも舞台の上でも刺激を与えてくれる友人がいることは、とても喜ばしいことです。
ヨーナスとは、これまでに一度、音楽祭でブリテンのソナタとシェーンベルクの《月に憑かれたピエロ》を共演しました。2007年にヘルシンキで開催されたパウロ国際チェロ・コンクールに参加して以来、フィンランドは私の音楽人生の一部となっており、現在はタピオラ・シンフォニエッタのアーティスティック・パートナーも務めています。そこで再びヨーナスと出会い、日本での公演に向けて準備を進めてきました。ヨーナスは常に新しい音楽に囲まれて生活していて、そのことが主要レパートリーに対しても非常に新鮮なアプローチをもたらしています。これはとても重要なことです。過去の作曲家の思考は、現代のさまざまな作曲家と日常的に関わることでこそ、初めて本当に理解できるのだと思います。

2日目のプログラムのコンセプト、聴きどころについてご紹介ください。

3つの作品に注目していただきたいと思います。
まず、私は2011年にニューヨークでバルトークの初期のピアノ五重奏曲に出会い、深く魅了されました。この作品は、当時彼が書いた別の作品よりも私的な演奏会で成功を収めたにもかかわらず、本人によって退けられてしまいました。その後、再び演奏されるようになったのは1960年代に入ってからで、私がこの作品に出会った当時も、まだ演奏会の定番曲とは言えない存在でした。これは、ひとつの時代の終焉と、ふたつの大戦や十二音技法といった新しい音楽体系を生んだ20世紀が交差する、非常に興味深い時期の音楽です。ブラームスのクラリネット五重奏曲と、シェーンベルクの《浄夜》は、それほど大きく時代が離れていません。バルトークの五重奏曲には、神秘性やチャルダッシュ、R.シュトラウス、マーラー、ドヴォルジャークの影響が色濃く感じられますが、私は《青ひげ公の城》の響きも聴こえてきます。この作品は私のお気に入りのひとつとなり、ロッケンハウス室内楽音楽祭のCDシリーズの最初の録音にすべきだと決めました。
次に、ショスタコーヴィチです。私が6歳のときに初めて出会った作曲家であり、それ以来ずっとその音楽語法は身近なものになっています。《ブロークの詩による7つのロマンス》は晩年の室内楽の傑作であり、すべてが非常に独特です。アレクサンドル・ブロークによる神秘的な詩は象徴性に満ち、心に残る妖しさを帯びています。楽器編成の独自性や、極限まで削ぎ落とされた厳選の音楽的構成要素は、この作品を聴くたびに存在に関わる深い体験へと誘います。
そして、ドヴォルジャークのピアノ三重奏曲第4番《ドゥムキー》です。この作品はピアノ三重奏曲のなかでも特に頻繁に演奏される曲ですが、これほど誤解されている作品もないと感じています。これはドヴォルジャークの人生における核となる作品のひとつであり、ブラームスの影響下で書かれた交響曲第7番やピアノ三重奏曲第3番(ヘ短調 Op.65)のような対位法的書法から、スラヴ的様式へと移行する重要な転換点に位置しています。この曲は、シューベルトが《冬の旅》の〈辻音楽師〉で描いたような、盲目のウクライナの吟遊詩人たちの物語を受け継いでいます。こうしたドゥムキーの歌い手たちは、後にスターリン体制下で粛清されてしまいました。《ドゥムキー》は、同時期に書かれた《レクイエム》 Op.89と並ぶ、時代を先取りしていた名作なのです。

さまざまなプロジェクトを抱えながら世界中を飛び回っていらっしゃいますね。多忙な日々をお過ごしだと思います。10年後、15年後は、どのような活動をされているとお考えでしょうか?

世の中には、さまざまな角度からスポットライトを当てるべき素晴らしい音楽が、まだまだたくさんあります。私は常に新しい音楽を委嘱しています。主にチェロ協奏曲ですが、まだレパートリーが少ない珍しい編成の作品にも挑戦しています。最近ではリザ・リムの協奏曲がとても充実した経験となりました。いま作られている他の協奏曲も、多くのチェリストにとって同じように心に残る作品になってほしいと思っています。
さらに、これまでほとんど、あるいはまったく録音されてこなかった素晴らしい音楽も、まだまだたくさんあります。それらも記録しなければなりません。特にロッケンハウス室内楽音楽祭のCDシリーズを通して取り組んでいますが、普段のソロ・アルバムでも同じように挑戦しています。いまは、グラジナ・バツェヴィチの協奏曲や、チェロ独奏の重要レパートリーであるシャンドール・ヴェレシュのソナタを収録しています。
多くの作品は当時の楽器での録音がまだです。最近、ボッケリーニの全協奏曲を初めて古楽器で録音しました。私自身、室内楽や交響曲は膨大で、その世界には終わりのない探求があります。発見し、学び続ける必要があるのですが、それをするには生涯があまりにも短く感じられます。音楽以外では、自然のなかで過ごしたり、本や美術に触れたり、大切な人々と過ごす時間を楽しんでいます。

最後に、今回の公演を心待ちにしている聴衆に向けてメッセージをお願いします。

日本は私の大好きな国のひとつです。文化も人も本当に大好きです。ここで演奏させてもらえるのは、本当に光栄なことです。TOPPANホールの音響は素晴らしいですし、日本の聴衆はクラシック音楽にとても集中して聴いてくれるので、演奏していて本当に刺激になります。
日本のみなさん、いつも私たちを温かく迎えてくださり、ありがとうございます。5月に私の大好きな音楽を聴いてもらえるのを、とても楽しみにしています。

(2026年3月取材)

ニコラ・アルトシュテット(チェロ)プロジェクト

第1夜―Duo

2026/5/26(火) 19:00

ヨーナス・アホネン(ピアノ)

第2夜―マラソンコンサート

2026/5/29(金) 18:30

イリア・グリンゴルツ(ヴァイオリン)/毛利文香(ヴァイオリン)/
原 麻理子(ヴィオラ)/アンナ=レナ・エルベルト(ソプラノ)/
ヨーナス・アホネン(ピアノ)

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