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インタビューInterview

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森谷真理&大西宇宙の写真

Viva Verdi! II トッパンホールプレスVol.117より

森谷真理(ソプラノ) Mari Moriya

大西宇宙(バリトン) Takaoki Onishi

進行=
西巻正史(トッパンホール プログラミング・ディレクター)
写真=
藤本史昭
取材・文=
トッパンホール

ヴェルディを愛してやまない森谷真理とトッパンホールによる“ヴェルディ・プロジェクト”第2弾は、欧米での活躍もめざましい大西宇宙を迎え、天才ヴェルディの最盛期オペラを集めた豪華プログラムをお届けします。本番を前に、ヴェルディへの想い、おふたりの出会いやアメリカ留学について、楽しい思い出話をお話しいただきました。


ランチタイムコンサート(2018年12月)では初期の名アリアを集めて、森谷さんが見事なヴェルディの世界を描いてくださいました。あれから3年ですね。

森谷: お昼の30分公演でしたから、朝起きてすぐに歌って、すぐ帰る、みたいな感じでしたね(笑)。今回は続編、しかも大評判の大西くんと一緒で本当に嬉しいです。

大西: 真理さんは武蔵野音楽大学の先輩で、僕は真理さんを追いかけて留学先をアメリカに決めた、という関係です。以前からよく知る間柄なのに、舞台でちゃんとアンサンブルするのは今回が初めて。すごく楽しみです。

森谷真理の写真

さっそく、ヴェルディについてお話しいただけますか?

森谷: ヴェルディ、大好きです。音楽の圧力が圧が群を抜いて熱いんですよね。推進力があって、エネルギーの塊みたいに音楽が奏でられていく。歌っていても聴いていても興奮するし、やる気が出ます。お客さまも含めて、全員で燃え尽きるようにエンディングに向かうのがヴェルディじゃないかしら。

大西: 「ヴェルディは歌うことで声を教えてもらえる」とも言いますね。歌唱の勉強では技術的なことは切り分けて学ぶんですが、ヴェルディに関しては、歌い続けていくことでテクニックがだんだん分かってくる。喉の開け方や発声の根本的なことが、歌いながら実感されて自然と身についていきます。

森谷: 自分に合った役だと、本当に自然に声が音楽に乗りますしね。ヴェルディは、声のことをとてもよく分かっている作曲家だと思います。あと、ヴェルディの音楽は「熟練」という言葉がとても似合う。特に中期は、作品の構成や音楽性だけでなく、ヴェルディ自身が花開いた時期だった印象があります。ヴェルディのオペラといって真っ先に思い浮かべるタイトルのほとんどは、中期ですよね。

大西: 中期は、楽譜がぐっとシンプルになっているのも興味深い。昨年、初めて《椿姫》を全部演じたときには、人間の声ひとつだけで世界をどんどん広げていく凄さを感じました。「声」に重きを置いてドラマがつくられているからですね。後期になると、アンサンブルに比重が移って、グランド・オペラのような形になっていきますけれども。

森谷: 作品のスタイルが、初期・中期・後期とはっきり分かれているのは、ヴェルディのユニークなところですね。そんな作曲家、ほかに思いつかない。

確かに、ヴェルディほど顕著な作曲家はいませんね。1回聴いただけではストーリーを追いきれないところも面白いと感じます。

大西: 登場人物に翳のある二面性が描かれていて、人間描写に奥行きがありますよね。リゴレットも娘思いのいいお父ちゃん、という見方もできなくはないけれど、《エルナーニ》や《マクベス》のように分かりやすく悪者がいる物語に比べると。それこそ《椿姫》のジェルモンを演じるときには、いつもどんな人物なのか悩みますし、複雑な人物像を上手に描いていると感じます。

大西さんは、まさにこれからヴェルディを歌っていく人、だと思います。翳と重みがある役にピッタリじゃないでしょうか。

大西宇宙の写真

大西: 「ヴェルディ・バリトン」は、それだけでひとつのジャンルだと思っていて、今回は大きな挑戦です。自分で言うのもなんですが、バリトンとして声が成熟してきたいまだからこそ、ヴェルディを歌えると感じています。バリトンは声質的に年かさの重い役柄が多いので、年齢を重ねるほど、役にだんだんと追いついていくところがあります。だから、年齢的な深みを増した声質で歌いたいと、ずっとタイミングを待ってきました。

森谷: 声に年齢の刻みが現れると、深みや味わいが出てきますもんね。ソプラノの私には、羨ましい。

大西: その分、20代はじっとじっと我慢でしたよ(笑)。

おふたりのことも少し伺えますか? ご関係のきっかけから教えてください。

大西: 大学卒業後のことを考えていたときに、当時の先生に真理さんのご活躍を聞いてニューヨークに興味を持ったのがはじまりです。卒業後も現地で歌うことを念頭にしていたので、それを実現されていた真理さんは僕からしたらスーパースター。連絡を取るのはすごく緊張しましたが、とにかくお話を聞きたいとメールしたのがきっかけでした。ミッドタウンのスターバックスでしたよね、初めてお会いしたの。

森谷: 連絡をもらってまず、「8年経って、ようやく誰か来た!」と。しかも同じ大学の後輩でとても嬉しかったのを覚えています。留学後のキャリアまで見据えて学んでほしい、とにかく私の持っているすべてを伝えなきゃ、と、“初めまして”なのに夢中になってしゃべってしまって(笑)。すでにアメリカとヨーロッパを行き来する生活をしていたので、私が出会った素晴らしい人たちとのコネクションがあるうちに、次代へ繋げたいと思ったんです。一度切れてしまうと難しいから。

大西: あの頃は、歌手の留学といえばヨーロッパが主流でしたけど、むしろ欧州に行くより深く勉強できたと思います。イタリア語、フランス語、ドイツ語、ロシア語いっぺんに勉強できるのがアメリカ。行って良かったと100%思っています。

森谷: 私も当初はイタリア留学を考えていたんですが、両親に知り合いのいるニューヨーク以外はダメと言われて行先変更。でも大正解でした。アメリカの教育はとても実践的で、プロの歌手になることを前提に徹底的なシステム構築がされているんです。それがいまの自分のベースになっていますね。

大西: メトロポリタン歌劇場の現役コーチが教えてくれるなど専門性が高いし、一日中演技の授業だったこともありました。

森谷: 音楽だけでなく、ミュージカルやバレエ、演劇、美術など、手の届くところに何でもあって、いつでも芸術文化に触れられる街ですしね。

大西: シェイクスピアとか、よく観に行ったな。アメリカにはいまもヨーロッパの古い文化がいいかたちで残っていて、欧州出身の人も暮らしているし、街並みも新旧が共存していて、古いものに対する愛情もすごくある。ヨーロッパにいるような錯覚を覚えるし、ヨーロッパからの留学生も多いですしね。

森谷: ふたりだと、ついアメリカを熱く語っちゃうね。

大西: 確かに(笑)。

相性抜群ですね。

森谷: そういえば、今回のピアノの河原さんに「似てる」と言われたのよね。

大西: 河原さんもヴェルディ大好きだし、きっとこのプログラム、楽しみになさっているでしょうね。

森谷: 私たちと一緒に世界をつくってくださる、実にありがたい存在です。ご自身の世界を持ちながらも、歌に寄り添ってくれる。歌手にすべてお任せじゃないところが好き。

大西: 昨秋初めて共演しましたが、あんなに歌を聴いてくれるピアニストって、いそうでいないですよ。河原さんは僕らの何が似ていると思ったんだろう。

森谷: 武蔵野からアメリカに行ったというだけで、年齢も性格も違うけど。でも信頼している人が感じるんだから、何かはあるのかな。

大西: 今回のステージでは、ヴェルディの魅力とともに、そこも明らかになるかも知れませんね(笑)!

(2022年3月)

森谷真理(ソプラノ)&大西宇宙(バリトン)

2022/5/27(金) 19:00

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